リクエストSS
□いつか出会う君
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一晩かけて、とりあえずここが二十年後の世界だとディーノに認識させ、雲雀はディーノと朝食を共にした。
最初は手をつけなかったディーノだったが、空腹なのを思い出したのか、やがて勢い良くパンを口に詰め込むようになった。
うかつに部屋の外に出して他の委員達の目に触れることは避けたい。
事実、何も知らされず主の私室を訪ねた草壁は幼いディーノを見るなり
「いつの間に産んだんですか」
などと口走り
「計算が合わないだろ」
とズレた答えを返した主に頭部を殴打される羽目になった。
朝食を終え雲雀もディーノも多少落ち着いた頃、雲雀の携帯に待ちかねた着信があった。
「やあ、赤ん坊」
『チャオ、ヒバリ。何だかおもしれー事になってるみてーだな』
昨夜ディーノから聞き出した支離滅裂な説明の中で『リボーンと修行してたらあいつがバズーカー打ち込みやがった』との一言があったため、元凶と思われるアルコバレーノに急ぎ連絡を取ったのだ。
『一つ確認するが、お前の部屋でバズーカーやそれに準じるシロモノをぶっ放した事実はねーんだな?』
「ないよ」
そもそもこの部屋にはそんな物は置いていない。
『だとしたら向こうの世界でぶっ放されたとしか思えねーな』
「他人事みたいに言うね。二十年前の君の仕業なんだろう」
『生憎【今】の俺にはそんな覚えはねぇ』
「……何だって?」
予想外の言葉が雲雀の耳に突き刺さる。リボーンの過去の記憶と照らし合わせてこの事態の収拾をつけるつもりだった雲雀は、携帯を耳に当てたまま固まった。
『事実を言ったまでだ。ソレは昔からボヴィーノんちの門外不出の品でな。いくら俺でも持ち出す事も使う事も出来ねぇんだ』
「だって修行で使われたって」
『それは俺じゃねぇ。正確に言うならこの世界の俺じゃねぇ』
「どういう意味」
『「この世界に平行して存在する別世界の俺かもしれねぇって事だ』
それはいわゆるパラレルワールド。
ほんの些細なきっかけで未来は無数に枝分かれして行く。これから先の未来だけでなく、過ぎ去った過去もそれより過去における先の『未来』であるのだ。
「なら、ディーノはどうなるの」
この世界のディーノと入れ替わりでやってきた別の世界の幼いディーノ。
消えたディーノはこの子の世界の時代に飛んだのか。それとも。
『最悪の事態は考えておいた方がいいかもな』
それはすなわちこの時代に本来いるべきディーノが戻って来られない可能性を示している。
「冗談じゃない」
『俺だって冗談でこんな話してねー。こっちはこっちで過去の文献でもあさってみるから、お前はとりあえずそいつの面倒でもみてろ。じゃーな。チャオチャオ』
一方的に話を切り上げられ雲雀は手の中の携帯を見つめた。