リクエストSS
□沢田綱吉的休日の過ごし方
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ディーノと雲雀が所謂『恋人同士』であると言うのは薄々感づいていた。
雲雀はともかくディーノは分かりやすすぎるくらい顔に出るので、口では何を言っていても顔には『俺は恭弥が大好きです』と大書きされている。
注意してよく見てみれば、ディーノと共にいる時の雲雀は纏う空気が柔らかい。
そうなんだ、と思いこそすれ、それがおかしいとか不謹慎だとかは思わなかった。
(だからって限度があるだろう)
「そう簡単に人を殴っちゃ駄目だってツナだって思うだろ。だからお仕置きーっつって残ったケーキ俺食っちゃったんだよ」
「……ディーノさん、甘いもの苦手だったじゃないですか……」
「おう、基本的にはな。けど恭弥の身体にブチまけてあいつを可愛がりながら食ってたら美味かったぜ。んで完食」
(女体盛ならぬヒバリさん盛ってコト……?)
うっかり想像しかけて綱吉は慌てて頭を振り、その図を掻き消す。
二人の付き合いを黙認したとは言え、その付き合い方を知りたい訳ではない。
何が悲しくて兄弟子と、いずれ自分の部下となる先輩間で行われている行為を事細かに知らせられねばならないのか。
「そのまま先に進もうと思ったらソファーが汚れるから嫌だってワガママ言うし」
(いや、それワガママじゃないだろう)
「じゃーしゃーねーやってベッドに連れてったら今度は風呂に入れろって暴れるし」
(当然でしょうが。つか風呂に入らなきゃならないようなプレイしないで下さいよ)
「あんまり暴れるから鞭で手首縛ってベッドヘッドに繋いだらさ、出来る体位って限られんじゃん。それが気に入らなかったみたいで、終わってから口利いてくんなくてさ」
(もう勘弁して下さい)
この調子で知りたくもない二人の性事情を延々と聞かされ、気付けば爽やかだった朝の日差しは温度を上げた午後のそれに変わっていた。
「そんでなー」
相変わらずなディーノの話を掻き消すバイクのエンジン音が聞こえて来たのは、正に突然の事だった。
その音がすぐ近くで消えたと思った途端、綱吉の部屋の窓ガラスが派手な音を立てて砕け散った。
「何事―――!?」
ベッドから転がり落ちた綱吉が窓を見ると、辛うじて枠だけ残った窓から雲雀が飛び込んで来るところだった。
「ヒバリさん―――!?」
「遅かったなヒバリ」
いつの間にか部屋の中には最強のヒットマンまで登場している。
「リボーン!お前どっから出てきたんだよ!つか、何でヒバリさんが俺の部屋の窓壊してんですか!?」
「どうして俺がここにいるって分かったんだよ恭弥」
「赤ん坊が連絡をくれたんだよ。金毛の馬がうるさいから連れて帰れってね」
「迎えに来てくれたのか?」
「勘違いしないで。赤ん坊に言われたから仕方なくだよ」
「二人共俺の話も聞いて下さい!」
必死に叫んで自分の存在をアピールするも、綱吉の声はどうやら二人には届いていないようだ。
「まだ怒ってんのかよ。いい加減機嫌直してくれよ」
さっきまで綱吉相手にぶつぶつ文句(なのか惚気なのかは不明だが)を呟いていたのに、ディーノは雲雀本人を目にした途端、目尻を下げ口端を上げ蜂蜜色の瞳はより甘く濃さを増し、要するに締まりなくでれでれの笑顔になった。
(ああ……俺、ディーノさんのこの顔知ってる……)
いわゆる『俺は恭弥が大好きです』と大書きされた顔である。