Novels 1

□Battle on Battle
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黒服の男達が、緊張の面持ちで屋敷中を駆けずり回っている。
つい先刻若い伝令係からもたらされた『襲撃』と言う言葉が彼らを走らせる。
不慣れ故か、伝令係から伝え聞いた内容は要領を得ないもので、とにかく屋敷の東棟が被害に遭ったらしいと言うことだけは知れた。

キャバッローネ邸は、5000人のファミリーが跋扈する西棟と、外部から招かれた要人達が立ち入る公の場所としての中央棟、そしてこの屋敷の当主や家族が住まう東棟に分かれている。実際の所、現在の東棟は現キャバッローネ当主・ディーノの私室と執務室、そして数部屋の客室を除き後は各種保管庫と化している。
当主の意向もあり、この棟には警備の人間を多くは割り当てていなかった事が裏目に出たのだろうか。

ボスに何かがあっては一大事と、色めき立った男達が中央棟から東棟へと渡る通路へ辿り着いた時、常にボスの傍らにいるべき右腕の姿が現れた。

「ロマーリオさん!」

「おう、来たなお前ら」

ボスの右腕は、殺気立った男共に動じる事無く紫煙を燻らせている。

「ボスは無事ですか!?」

「襲撃してきやがったのはドコのモンだ!?」

「敵の規模は!?」

「お前ら落ち着け」

掴みかからんばかりに迫り寄り問いかける男達を軽くいなし一瞥する。

「騒ぐんじゃねえ」

「いや、しかし……」

「お前らが心配してるような事じゃねえよ」

マイペースに男達に相対するロマーリオの背後では、壊され全開になった扉から数発の実弾が飛び出し壁を抉っていく。さながら銃撃戦そのものの様子に男達は息を潜め懐に手を遣るが、再度ロマーリオに制された。

「派手にぶっ壊されてるのはボスの私室と執務室だけだ。廊下の壁や調度品なんかはそれのとばっちり受けただけだが、それも被害に入れりゃ東棟半壊ってトコだな」

「半壊……」

「ざっと被害状況をまとめてあるから、それを踏まえて修理の見積もり出させろ。出たらボスんトコ持ってけ」

「ボス……ですか?」

「ああ、一番適任だ」

そんな会話の間も銃撃戦のようなものは続いているようで、奇跡的に無事だった花瓶もついに景気良く粉々にされた。
先ほどよりも銃の威力が上がっている気がするのは気のせいだろうか。

「向こう側に残ってる連中に、暫くこっちに近付くなと伝えておけ。ああ、修理の連絡だけはとっとと入れておけよ」

ロマーリオに促され、今来た通路を後ろ向きに戻らされようとした時、男達の目は部屋から飛び出す武器を見た。
つい先ほどまでの銃撃音は止んでおり、そこから実弾が飛び出して来ることはもうないようだ。
だが今部屋の外に投げ出され、壁にめり込んでいる銀色に光る『ソレ』。

「ロマーリオさん……」

「ほら、行け」

「いや……あのトンファー……俺見覚えあるんすけど……」

「俺も……あれって恭」

「いいから行け」

それらの遣り取りで大方を察したらしい部下達は、素直に今来た通路を戻って行った。
がっくりと肩を落としながら。

「ふぅ……」

トンファーが飛び出したと言う事は、どうやら実弾は切れたようだ。
互いの獲物を持ち出したなら、屋敷の主が僅差で押さえ込むのは確実だった。

「傍迷惑な夫婦喧嘩はボンゴレ屋敷ででもやってくれ……」

不敬な台詞を紫煙と共に吐き出し、ロマーリオは、自分の気持ちを誰よりもよく分かってくれる年下の親友にダイヤルした。
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