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□謹賀新年
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「恭弥!朝飯!ホテルに頼んで用意してもらったんだ!」
大きな音を立ててドアを蹴破り、挙句に耳元でがなられて起こされて、寝不足この上ない雲雀が激しく機嫌を損ねている事に気付いていないのか、ディーノはうきうき上機嫌で朝食の乗ったカートをベッドの隣に横付ける。
湯気の立つ雑煮と綺麗な漆の重箱に入ったおせち料理は趣があり、何より和食は雲雀の好物だ。
普段なら、すぐにも起き出して身支度整え食事に向かっていただろう。
だが今はそう出来ない理由がある。
「いらないよ。それより、また寝るから静かにして」
「ええ!?折角一緒に新年最初の食事とれんのに、何でそんなこと言うんだよ。なあ、一緒に食おうぜ」
「うるさいな。あなたのせいで寝不足で、朝食どころじゃないんだけど」
「えー……夕べのアレならお互い様じゃん。最後のはお前が強請ったんじゃねえか。泣きながら腰振って俺の銜え込んで離さなかったくせに」
「黙れ」
昨夜の営みを思い出したのか、ディーノは真っ赤になった雲雀に枕を投げつけられても嬉しそうな笑顔を消さない。
「お前があんなになっちゃうのなんて、滅多にないもんな。俺超嬉しかった。超気持ちよかった」
「黙れって言ってるだろ」
「お前も気持ちよかったろ?つか、あんなになってて気持ちよくない訳ねーもんな」
「新年早々頭から雑煮被りたくなかったら口を閉じろ」
脅しが効いたのかようやくディーノは口を閉ざしたが、顔はヘラヘラニヤニヤ締まりがない。昨夜のあれこれを逐一思い出しているに違いなかった。
認めたくないけれど、ディーノの言葉は全て正しい。
こんなことなら、例えディーノに止められようがアルコールでも摂取すればよかった、と思う。
そうしたら、もしかしたら上手いこと昨夜の記憶が消えていたかも知らないのに。
何をしようが、後で何を言われようが、覚えていなければそれまでだ。幾らでも突き放す事が出来る。
けれど、一から十まで覚えている身としては現在非常に居た堪れなく、ディーノの揶揄も上手くかわせそうにない。
羞恥と自己嫌悪に苛まれながらも何とか反撃しようとした雲雀は、それより先にディーノの胸に抱き込まれ咄嗟に固まった。
腕の温かさも、背を撫でる掌の心地よさも、いつもと変わらぬそれだった。
「無理させてごめんな。身体、大丈夫か?」
「別に……平気だけど……」
「嬉しくてさ。しかもお前めちゃくちゃ可愛くて、理性のストッパー外れちまった。怒ってる?」
「……もう、いい」
雲雀はディーノを押しやって、ワゴンを指差す。取り分けろ、という意思表示だ。
雲雀との意思疎通に定評のあるディーノは過たず雲雀の望みを叶えると、自分も雲雀の横に座って箸を持った。
「今年もよろしくな」
「普通はその前に新年の挨拶をするんだよ」
「Happy New Yearって?夕べ言ったじゃん」
「言ってないよ」
「日付変わってから結構時間経ったけど、ちゃんと言いました」
「嘘だ」
「あ、そっか。お前その時イきまくってたから分かってなかったのか」
「……今年あなたは口数を減らす事を覚えるべきだ」
ドア向こうで待機していたキャバッローネの部下達は、新年の朝からボスの断末魔にも等しい悲鳴を聞くことになったが、その理由はついぞ語られないままだったと言う。
2014.01.05(サイトUP 2015.12.31)