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□寂しい朝
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ここ数日、ディーノの顔を見ていない。一緒に暮らしているにも関わらず、だ。
仕事で多忙な彼とは、それでも、少し前までは一緒に朝食の席に着けたし、遅い帰宅時でも顔を見て言葉を交わす事も出来た。

でも今は、それすらもない。

朝目覚めると彼は既に家を出た後。日付が変わる頃まで頑張って起きて待っていても彼は帰って来ず、気付くと、彼の温もりのないベッドで寒さに震えて眠っている。
それは全て、彼の多忙さによるものだ。

支度をしてリビングに行くと、ここ数日恒例になった彼からの手紙が置かれていた。
不在を詫び、食事不要を告げ、恭弥の体調を気にかける言葉の数々。
最後は必ず『愛してる』で結ばれる手紙に、今日は、『明日は休みだから、ずっと恭弥に任せきりだった家事全部俺がやるからな!お前はゆっくり休んでろ。いつもありがとうな』との文言が添えられていた。

馬鹿じゃないのか、と恭弥は思う。
平日は自分が、週末は彼が家事をする約束とは言え、自分は時間のある学生で、彼はロクに寝る暇もない多忙な経営者だ。
折角の休みなのだから、彼こそゆっくり休むべきなのに。

傍らのソファーには小さく丸められた毛布が数枚。
深夜に帰宅した彼は、眠る自分を起こさないようここで寝起きしているのだろう。
そんな行動も、手紙の内容も、自分を気遣う彼の優しさだという事は重々承知だ。
でも恭弥はこんな時、何も出来ないただの子供であることを歯がゆく思い、また、苛立ちもする。

学校が終わったら買い物に行って、早い内に鍋いっぱいの料理を作ろう。
明日、一歩も外に出なくて済むように。一日中、彼とこの家で過ごせるように。
そして仮眠をとって、今夜は帰宅した彼を出迎えるのだ。それが例え深夜だろうが、朝方だろうが構わない。

「いってきます」

拾い上げ、抱き締めた毛布からは、大好きな人の香りがした。



2013.11.03(2014.10.20サイトUP)

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