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□2215七夕
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朝から降り出した雨は夜に差し掛かってもやむ事を知らない。
天の川のあちらとこちらに引き離された恋人達が年に一度だけ会う事を許された日。
けれどその逢瀬は、叶わずに終わりそうだ。

「折角の七夕なのに、雨だと会えなくて可哀想だよな」

「織姫と彦星の事なら、事の発端が自業自得なんだから仕方ない」

「そうだけどさ」

「それに、どうしても会いたい相手なら天の川なんて泳げばいい。雨だって理由にならない」

「無茶言うなよ」

「どうして。禁じられても、会いに行く手段を取り上げられても、どうしても会いたいなら何だって出来る。そして相手を浚いに行くよ。僕ならそうする」

雲雀は口を閉ざすと、手にした本に再び視線を落とす。
その横顔はいつも通りの無表情。今どんな爆弾発言をしたかなんて、きっと気付いていない。

「へへ」

「何。気持ち悪い」

「お前ならやりそう」

会う事を禁じられ、会いに行く手段を取り上げられたとしたら、自分なら置かれている立場や周囲の状況を考えてしまって、立ち往生してしまうかもしれない。
けれどこの子はきっとそんな事関係なく現れて、自分を連れ出すのだろう。
周囲の思惑や常識なんか、鮮やかに打ち壊して。

それなら自分だって負けていられない。

「お前にばっかカッコつけさせんのシャクだから、俺も頑張る。頑張ってお前を浚いに行く」

「さっきの話ならただの持論であなたの事を言ったんじゃない」

胡散臭げに見られても、ディーノの笑顔は消えない。

窓の外は暗い雨。
泣いても現状は変わらない。泣く程欲しいならなりふり構わず手に入れろ。
曇天のずっとずっと上にいる恋人達に、ディーノは笑顔でエールを投げた。






2012.07.07
 

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