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□1205兄弟パラレル:クリスマス
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そう大きくはない、とは言っても子供の背丈よりは遥かに大きなクリスマスツリー。
飾り付けを済ませてからもう何日も経つそれを、ディーノと恭弥は今日も二人で見上げる。

「こんな綺麗なのに、クリスマスが終わったら片付けなきゃなんねーのは勿体ねーな」

「あの星は僕がつけたんだよ」

大きなツリーのてっぺんで輝くトップスター。
父親に抱き上げられた恭弥が最後の仕上げにとつけた大きな星。

「うん。あれが一番綺麗だ」

「でも、その下の金色のベルも綺麗だよ」

誇らしげな弟の頭を撫でてディーノが褒めると、優しい弟は自分がつけた飾りの事も褒めてくれた。
緑色のもみの木を装飾するリボンとオーナメント。
金色の色彩がツリーを埋める割合は遥かに多いのは、それが恭弥の好きな色だから。

「なあ、何でお前そんなに金色好きなんだ」

「パパとディーノの髪と同じ色だから」

恭弥が金色を好むのは知っていたが、今の今までその理由は知らなかった。

「マジで?うわ、やべ、すっげー嬉しい。ありがとな」

「それ、違うよ」

礼を言いながらわしわしと黒髪を掻き混ぜるディーノを、恭弥は見上げて駄目出しする。

「『ありがとう』の時は、ちゅーするんだよ。パパとママがしてた」

何年経っても未だに恋人同士のような両親は、子供の前だろうが何だろうがお構いなしに触れ合う傾向がある。
5歳児の教育にはいささかよろしくないのではと心配していたディーノだったが、案の定弟は若干間違った知識を仕入れているようだ。
もっともこれは諌める程のものではなく、挨拶のキスは日常茶飯事でもあり、ディーノはそっと弟の柔らかな頬にキスを贈った。

「違う」

なのに恭弥はまだ不満げで。

「こうするんだよ」

ちょこんとディーノの唇に触れたのは、背伸びをする弟の小さな唇。
思わず固まった兄に構う事なく、さっさとしろと服の裾を引っ張って恭弥は急かす。

(恭弥、口のキスなんて初めてじゃねえのか!?うわ、俺恭弥のファーストキス貰っちまったぞ!どうすんだ!どうやって責任取ればいいんだ!?結婚か!?結婚すりゃいいのか!?)

内心パニックに陥りもはや何を考えているのか自分でも分からなくなりながらも、強請られるままにディーノは恭弥の唇に自分のそれを押し当てた。
小さな唇は思った以上に柔らかで、ディーノの心臓は壊れたように早鐘を打つ。
何とか平静を装って顔を離すと、満足気に笑む弟と目が合った。

「あのな。これは他の奴としちゃ駄目だからな」

「知ってるよ。パパにもそう言われた。パパとママとディーノとしかしちゃ駄目って」

「あいつともしてたのか……」

どうやら弟のファーストキスの相手は、自分ではなく父親だったらしい。

(くっそ、負けねぇ。来年は絶対俺の方を好きになってもらうんだ)

恭弥の胸の内が『父親>兄』なのを知っているディーノは、クリスマスをすっ飛ばして来年の抱負を胸に抱き、若干涙目でクリスマスツリーを見上げた。





2011.12.23
 

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