拍手ログ置き場

□2012.12.31
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「恭弥!雪積もってる!」

バタバタうるさく寝室に入って来たかと思えば勢いよくカーテンを開けるディーノのせいで、ぐっすり寝入っていた雲雀は半ば無理矢理覚醒させられた。
突然の眩しい光に視界が、思考がついていかない。

「雪合戦しよーぜ。雪だるま作るんでもいいし」

「やだよ。寒い」

寒いと言いつつも雲雀は、寝入った時のまま、一糸纏わぬ姿で寝台から降り立つ。

「わ!こら!」

ふわりと上半身を包むのは、たった今までディーノが羽織っていたファー付きの上着。
これを着て外に出たらしく表面は冷えているが、身を包む内側は彼の体温のおかげか温かく心地良い。

「んなカッコで出歩くなよ。目のやり場に困るだろ」

「何を今更」

ベッドの中では、雲雀自身さえ見たことのない箇所だって見られている。今更裸体を晒したところで何だと言うのか。
肩も合わなければ袖も裾も無駄に長い事にはイラつくも、寒いよりはマシだと胸の前で上着をかき寄せ窓の外を見遣ると、確かにそこは雪景色。

「な、外で遊ぼうぜ」

「まるではしゃいでる犬だね。誰かさんが遅くまで離してくれなかったせいで僕はまだ眠いんだけど」

「う……ごめん。んじゃ、午後からでも」

「その頃にはもうとけてるよ」

積雪が継続するほどの寒気ではない。
現に、日当たりのいい場所はもう積雪の嵩が減っていた。

「雪なんて、珍しくもないだろうに」

そう言った雲雀の身体に温もりが増えた。
上着の上からディーノが抱き締めているせいだ。

「俺はただ雪を見たいんじゃない。お前と一緒に見たいんだよ。冬の雪も、春の桜も、夏の新緑と秋の紅葉も、全部お前と一緒に見たい」

常に一緒にいられる訳ではないから。
その時々の季節の移り変わりを、可能な限り共に過ごしたいのだ。

「雪なんてまたすぐ降るし、積もる。来年も、その次の年も」

雲雀はディーノの腕から抜け出すと、肩から上着を滑り落とす。
ひとり慌てる男を気にせず堂々と着替えを済ませると、トンファー片手に振り向いた。

「雪の上は足を取られやすいからね。足腰を鍛える修行にならないこともない」

「そっちかよ」

口説き文句に返って来たのは、ちゃきりという色気の欠片もない金属音。
それでも、共に雪景色を堪能出来るならそれに越した事はない。
雪の中、武器を交わして暴れて、また息も絶え絶えに部屋に戻って、そして今度は窓からゆっくり景色を愛でよう。
銀色に輝く儚い雪が、陽の光に淡く消えていくその時まで。





2012.12.31
 

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