拍手ログ置き場

□2011.12.30
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恐らく、十二月後半の日本全国で恒例行事と化しているであろう大掃除。
ここ並中でも同様の行事が最近行われた。

応接室もその例に漏れず、風紀委員達総出で部屋中の掃除をし、不用品を廃棄した。
とは言っても、部屋の主による不必要物即廃棄主義の徹底により、古い書類をシュレッダーにかける程度の事ではあるのだが。

「没収品の処分は年明けでいいよ。返却するかそのまま売り払うかは当人の出方次第だしね」

全ての用事を終えた委員達に最後の指示を出していると、大きな箱を手にした委員が入室して来た。

「たった今委員長宛に届きました」

一抱えもある白い箱に張られた伝票には、アルファベットの羅列。
もうそれだけで贈り主が分かってしまうのが気に入らない。
委員達を先に帰し、一人になったところで雲雀は箱を開けた。
中から現れたのは、綺麗にアレンジされた黄色い花。

「向日葵……?」

自分の知るそれとは大きさが違うし、何よりこんな時期に見た事がない。
同封のペーパーによると、時期をずらして種を撒き通年収穫しているハウス品のようだ。
観賞用に綺麗に整えられたそれは、真夏の太陽に向かって背高く伸びる力強さはない。
それでも太陽や、それによく似た彼の人を思わせる鮮やかで明るい色彩は健在で。

「どうしろって言うんだ」

手の掛からないアレンジメントだから、わずかに水遣りさえしてやればいい。
冬休みと言っても自分を含め委員の何人かは登校するから、その水遣りだって問題ない。
そう思うのに、いざそれを机に放置したまま部屋を出ようとすると後ろ髪を引かれて立ち止まってしまう。
ぽつんと取り残された黄色い花に、見回りに出る自分を見送る時の彼の姿を重ねてしまい、放置出来なくなってしまった。

『もっと構えよ』

『話しよう』

『側にいたい』

『寂しい』

拗ねた彼が零す文句が、どうやら頭の中に刷り込まれてしまったらしい。

「仕方ないね。一緒にくるかい」

伸ばした指の先で触れると、花弁が嬉しそうに揺れた気がした。

海の向こうの彼が次にこの地を踏むまで、綺麗に咲いているといい。
その花を見たらきっと、花と同じような鮮やかな笑顔を向けるに違いない。

フラワーボックスを抱えて校門を出る雲雀の姿を見た者は、幸いな事に皆無だった。






2011.12.30
 

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