拍手ログ置き場

□2011.12.18
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どこを歩いても赤や緑の色彩が目に付き、軽快な曲がかかる季節。

クリスマスの雰囲気に街中が浮かれている。
こんな時は羽目を外す輩が増えるから、取締りと称して咬み殺す相手には事欠かない。
単体では物足りなくとも数がいればそれなりに咬み殺し甲斐があるし、身体を動かせばそれなりに充足感もある。

それなのに、つまらないと感じるのは何故だろう。

繁華街に出向いて、群れを作る輩を片っ端から咬み殺せばそんな気分も消えるだろうか。
雲雀が物騒な思い付きを実行しようと踵を返した時、それを引き止めるようなタイミングで校歌が流れた。

携帯に表示されたのは『馬』の一文字。
気が削がれた雲雀は思わず電源を落とそうかと思ったが、後々うるさく言われるのが分かりきっているので已む無く応答ボタンを押した。

「うるさい」

『開口一番それかよ!』

「忙しいんだ。邪魔するな」

『俺だって忙しいんだっつの』

「なら切るよ。じゃあね」

『待て待て待て!』

「何。忙しいんだろ」

『忙しいけど今は休憩中なの。お前の声聞きたくて電話してんだから、も少し付き合えよ』

「十分聞いただろ」

『こんなもん聞いた内に入るか。あのさ、クリスマス、そっちに行くから』

「忙しいんだろ」

『うん、けど、行くから。これ決定事項。プレゼント、何がいい?』

「現金」

『却下。物品にしなさい』

「換金したら高額の現金にかわるもの」

『売り払うの前提かよ。正直過ぎんだろ。せめて俺にバレないようにして下さい』

「面倒くさいな。なら、いらない。もしくは何でもいい」

『ん、お前の気に入りそうなの選んで持ってくから、いい子で待ってろ』

「命令するな。どうしてあなたを待たなきゃいけないの」

『お願いします。待ってて下さい』

「そこまで言うなら待っててあげない事もない」

『ありがとなー。また電話すっから希望品あったらそん時言え。じゃあまたな』

いつもと変わらず一方的に告げては切れる通話。
それを不快だと思わないのは何故だろう。
ついでに言えば、さっきまでつまらないと感じていた気持ちが綺麗さっぱり消えているのは何故だろう。

考えても答えの出ない事をわざわざ考え続ける必要もない。
群れを咬み殺す気も消え、雲雀は人の流れに逆らって歩き出した。
近日中に現れるであろう男を思う存分咬み殺す事の出来る楽しみが、今の自分にとっては何よりのクリスマスプレゼントだと思った。






2011.12.18
 

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