拍手ログ置き場

□2011.05.08
1ページ/1ページ

「暑い」

「しゃーねー、5月は初夏だ。晴れりゃ気温も上がるしな」

「そうじゃない。あなたが暑苦しい」

雲雀は圧し掛かろうとするディーノを蹴り剥がす。

「ひでぇ」

「それでなくてもあなた無駄に体温高いんだから。眠れないからあっち行って」

「いいじゃん、これからもっと熱くなる事すんだから」

「冗談。昨日したばかりだろ。今日はしない。おやすみ」

雲雀はベッドの端に寄りシーツに包まるが、ディーノはそれでも諦めない。

「マジで寝ちまうの?夕べみたくしつこくしないから。ちょっと触るだけ。何ならキスだけでもいいから」

もぞり、と雲雀がシーツから顔を覗かせてディーノに身体を近づける。
喜んだディーノだが、雲雀が枕の下からトンファーを取り出したのを見て雲雀に伸ばした手を止めた。

「ここからこっち側に入ってこないで」

ベッドの中央で縦に二本並べられたトンファー。二人を分かつ境界線。

「入ってきたら咬み殺す。今回の来日中、もうしない」

一方的に言い捨てて、再び雲雀はベッドの端へ転がってしまった。
残されたディーノは途方に暮れる。
嫌がる雲雀に無理矢理行為を強要する気はない。けれど近くで寝られないのは寂しい。
トンファーぎりぎりまで身体を寄せて雲雀の背中を見つめる。ちょっとでも近くに寄りたくて。

その体勢のまま、どうやら少しだけ眠ったようだった。
ふと目を覚ますと、ベッドの端にあった雲雀の背中が近くに来ている。
ディーノがぼんやり見つめていると、細い背中はじりじりとディーノに向かって移動してくる。
少しずつ、少しずつ。やがてその背がトンファーに触れると、動きを止めた。

「恭弥」

ディーノの囁きに雲雀は不自然に身体を強張らせる。どうやら寝ぼけている訳ではなさそうだ。

「こっから出ないからさ、せめてこっち向いてくんねぇ?」

「……いつから起きてたの」

「今さっき。てか、どうでもいいじゃん、そんなの」

渋々と言った風に雲雀はディーノと向き合う体勢をとる。

「トンファーどかしちゃ駄目?」

「駄目。暑いから駄目」

「俺がいたら暑い?寝れねぇ?」

「……」

「んじゃ俺ベッドの端寄ろうか?何なら別の部屋で寝てもいいし」

「……」

「おやすみ恭弥。ゆっくり寝ろよ」

身を起こしたディーノの腕は、咄嗟のように伸ばされた雲雀の手で掴まれた。
当然、トンファーで作られた境界線は越えられて。

「あ……」

「領空侵犯」

ニヤリと笑ったディーノはその腕を取り、シーツに縫い留める。

「今のは、お前が悪い」

トンファーを蹴散らして覆い被さるディーノを、雲雀は物言わずにただ見上げる。

「余計な事考えられないくらい、熱くしてやるよ」

囁きと共に、ディーノの唇が雲雀のそれに寄せられる。
触れる寸前、雲雀は瞳を伏せた。






2011.05.08
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ