拍手ログ置き場

□2011.03.01
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暖かな室内。
ソファに寛ぐ飼い主の指先を啄ばむ黄色い鳥と、それを優しげな瞳で見守る飼い主。

ホテルの一室には穏やかでほのぼのとした空気が広がっていた。

「なー恭弥、ソレ何?」

先程からヒバードが雲雀の手に頭を突っ込みぽりぽりと啄ばんでいる小さな菓子。

「雛あられ」

淡い色に着色された米粒大の菓子は、小さな鳥が食べるのに丁度良い。

「俺が前に見たのはもっと丸くてデカかったぞ」

「それは関西風。作り方も少し違う」

「ふーん」

季節を知らせるものの一種という事でホテル側が客室に備え付けたのだろう。

「なーなー恭弥、俺もそれ欲しい」

雲雀の隣に腰掛けたディーノは上目遣いに強請ってみるが、雲雀は無言で卓上に置かれた小袋を指差すだけだ。
勝手に食べろと言う事らしい。

「食べさせて」

「なんで」

「そいつには食わせてやってんじゃん」

「鳥と同レベルにまで落ちないでくれる」

「恭弥にあーんてやってもらえんなら鳥扱いでいい」

「バカなの?」

呆れ顔で雲雀は睨むがディーノは楽しそうに口を開けて待っている。
試しに数粒の雛あられを摘んで口の中に落としてやると、それはもう嬉しそうに咀嚼する。

「美味い」

「駄菓子みたいなものだよ」

「恭弥が食わせてくれんなら何でも美味い」

そして再び口を開けて再度の餌付けを待つディーノ。
先程と同じようにディーノの口内に雛あられを放り込もうとした雲雀だったが、少しだけ考える素振りをした後自分の口に放り込んだ。

「あー俺の!自分で食うなって……」

低レベルな非難は、突然重ねられた雲雀の唇によって中断させられる。
すぐに唇は離れたが、真っ赤になって口を押さえるディーノはものも言えない。

ディーノの口内には小粒な菓子。
雲雀の口から移された雛あられ。

「この子と同じ扱いだよ。嬉しい?」

「おっ……おまっ……いっつも口移しで食わせてんのかよ!?」

「たまにね」

涼しい顔で雲雀は雛あられを摘み上げ再度口に含むが、今度は自分で食べてしまった。

「顔真っ赤だよ。あなたの方がいつもすごい事してくるくせに」

「不意打ちに弱いの、俺は」

「ふうん」

満腹になったらしく、いつの間にかヒバードは雲雀の掌の上で眠っていた。

「僕も眠い」

「う、わ!?」

潰さないように緩くヒバードを抱き、雲雀はディーノに体重を預けた。
咄嗟の事で受け止めきれず、ディーノは雲雀に圧し掛かられる体勢で一緒にソファの上に転がる。

「みんなで一緒に寝ようよ」

やがてディーノの胸の上で聞こえてくる規則正しい寝息。

ディーノの腕の中の雲雀。
雲雀の腕の中のヒバード。

「これも川の字って言うのか?」

形態からすると、漢数字の『三』の字が近いかもしれない。

(まあ、いいか)

ディーノも目を閉じて贅沢な昼寝の時間を楽しもうと決めた。

暖かく穏やかな春の日。
こんな日も、悪くない。







2011.03.01
 

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