恋涙〜賢者の石〜


□誕生日。君に誓う小さな決意
2ページ/4ページ



 エリスの手紙をジッと見つめるリドルの代わりにハリーがホグワーツからの手紙を開けた。そこにはミネルバ・マクゴナガルという人から入学許可の内容が記されていた。リドルはハリーに読まれてやっと意識をホグワーツの手紙に向けた。

「…梟便って、なに」
「おっとどっこい!!忘れるとこだった」

 リドルの疑問にハグリッドは羊皮紙に走り書きをするとポケットから、なんと梟を取り出した。生きている!!リドルはボンヤリと『動物愛護団体に見せられない光景だな』と場違いに考えていた。
 すると、ハグリッドはせせら笑いながらバーノンが「コイツらは行かせない」と言ったのを否定した。

「“マグル”って?」

 ハリーがリドルに向かって問いかけた。リドルは手紙を読んでいたのでバーノンとハグリッドの会話を聞いてはいなかった。

『自己紹介が遅れましたね。私の名前はエリスと言います。貴方の名付け親です。実は、貴方に一度だけあったことがあるのですが…覚えていたら嬉しいです。あのときは急に殴ってご免なさい。貴方があまりにも生意気だったのでお灸を据えさせてもらいました。私もよくヴォルデモートから受けていたものです。…いつか絶対仕返ししてやる、あの蛇野郎…っ』


「吹っ飛んだ?!自動車事故で死んだって言ったじゃない!!」

 ハリーの悲鳴の様な叫び声にリドルはハッと我に帰った。リドルにはハリーが泣くのを我慢しているように見えた。リドルは手紙をポケットに入れるとハリーの肩をそっと抱き締めた。ハリーの肩は僅かではあったが震えている。

「あのジェームズ・ポッターとリリーが自動車事故なんぞで死ぬわけなかろう?!なんたる屈辱、なんたる恥!!魔法界の子供は一人残らずハリーとリドルの名をしているというのに本人達がその事を知らんとは!!」
「どうして僕達のことを知ってるんだ?一体僕達に何があったんだ?」

 リドルは声を出すことが出来ずにいるハリーの代わりにハグリッドに聞いた。だがハグリッドは答えるのに躊躇っている。

「教えて。何も知らずに僕らは魔法界には帰れない」
「…分かった。いずれ誰かが言わなならんことだ…だがしかし…何処から話すか――…先ずはリドル、お前ぇさんね父親の事を話さねば…」

 ハグリッドは急に恐怖に俯いた。リドルは首を傾げながら聞いていたが不意に恐怖の対象の名に気が付いた。もしかして…だからペチュニアがあんなにも自分を“トム・リドル”と呼ばせていたのでないだろうか?

「リドルの…お父さんがどうしたの?」
「…ハリー、きっと…名前を言いたくないんだよ」
「え?」
「――…ハグリッド、これはあくまでも僕の推測だ。違ってたら違うと言ってくれ」

 次はリドルが震える番だった。言いたくない。言いたくはないが…そう考えると納得がいく。

「僕の父親が、ハリーの両親を殺したんだね?そしてその場に僕らもいた。違うかい?」
「そっ…んな、リドル?!」

 リドルの冷静な声に、悪い冗談は止せと言わんばかりにハリーは怒りを込めて睨んだが…リドルは声とは裏腹に真紅の瞳を滲ませていた。

「…そうだ。もう二十年も前になる。『例のあの人』は仲間を集め出した。何人かは仲間に入った。恐怖から入る者、おこぼれに預かるために仲間になった者、純粋に奴に惹かれて仲間になった者。暗黒の日々じゃよ、ハリー…誰を信じて良いのか判らん。やがて我々の世界を奴が支配し始めた。立ち向かう者もおったが…みんな殺された。残された数少ない安全な場所がホグワーツじゃった。奴もダンブルドアには一目置いていたから手が出せなかったんだ」
「…僕の父親が…人殺し――…」
「…リドル」

 ハリーは表情がないリドルを心配そうに見つめた。


「ハリー、お前ぇさんの両親はそのホグワーツ中で一番優れた魔女と魔法使いだった。在学中は二人とも首席じゃった!!皆が二人を好いとった。学校一の人気者じゃったんだ。『例のあの人』がもっと早くに仲間にしようとしなかったのは謎だが、ダンブルドアと親しい二人が仲間になるとは考えなかったんだろう。じゃが、十年前のハロウィーンの日に事件が起こった。お前さんは一歳になったばかりじゃった…なのに突然やって来た『あの人』によって…っ」

 ハグリッドは突然泣き出した。ハリーはそれで悟った。自分の両親はハロウィーンの日にリドルの父親によって殺されたのだと。そしてその事実にハリー以上にショックを受けているのは他ならぬリドルだということにも。

「…どうして、ハリーは生きてるの?僕が“奴”なら、きっとハリーも殺すよ」
「リドル、もういいよっ」
「ハリー、大事なことだよ。僕にとってはね」

 驚く程に冷たいリドルの声にハリーは恐怖を抱いた。リドルがこんなに怒りを抱いた姿を見たことがない。

「勿論、リドルの言う通り…『あの人』はハリーを殺そうした。じゃが不思議な事が起こった。死の呪いを放ったはずなのに、ハリー、お前ぇさんは無事だった」


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ