恋涙〜賢者の石〜
□やって来たのは巨大な郵便屋さん
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「…ハ、ハリー?」
「……………?!」
「さっきからずっと、グズグズグズグズ泣きやがって…男だろうがテメェは。玉ついてんならテレビ観れないぐらいで泣いてんじゃねぇよ…こちとら、車に酔って頭が痛ぇんだよ…それ以上泣いてみろ、二度と男として機能できないようにブッ潰してやるからな…」
『ナニを?!』
ダドリーが生まれて初めてハリーに恐怖を感じた瞬間だった。ダドリーが記憶しているハリーは無表情で大人しく自分には逆らわない(と、いうか相手にしていない)というハリーだ。こんなに真っ黒なハリーは知らない。
「…ハリー、カッコイイ…っ」
『なんで?!なんでそこで冷たく真っ黒で鋭い眼差しのハリーをうっとりと見つめてるんだよ?!』
それが“恋は盲目”だと言うことをダドリーは知らなかった。
「…リドル、枕して」
「うん♪」
また以前のようにリドルの肩を枕にしたハリーはウォークマンのボリュームを最大限に上げて深い眠りに着いた。
それからはハリーのぶちギレ領域に触れないよう大人しくなるダドリー、自分に凭れて眠るハリーを愛しく見つめるリドル、なにやらブツブツ言っているバーノンとオロオロするペチュニアに分かれた。
途中、カビ臭いホテルに一泊したが翌朝にはまた手紙が届いていた。ハリーとリドルに百通ずつだ。バーノンはそれを全てホテルの者に破棄させるとまた車にハリー達を押し込めて走り出した。
「おい、もっと丁寧に走れ」
「貴様っ?!誰に向かって口を聞い「文句があるなら僕とリドルを降ろせ。アンタが渡されたくない手紙とやらは受け取る事になるだろうけど…僕達が移動する度に宛名が変わってるんだ。無理にアンタから奪わなくたって僕達の手に渡るのは時間の問題だと思わないか?」
クックックッ…とハリーは低く笑う。どうやらハリーは臨界点を越えてしまったらしい。明らかにキャラが変わってしまっている。副管理人が九割方表に出てしまったような口調になってしまっている。
「パ、パパァア?!家帰ろうよ?!今日は月曜日なんだよ?!」
リドルはチラリとダドリーを見る。曜日に関しては観たい番組があるダドリーの発言は信用出来る。
「…まいったな…今年は手作りケーキにしようと思ってたのに…」
誰に言うでもなく呟くリドルは溜め息を吐いた。今日が本当に月曜日なら明日は火曜日。ハリーの11歳の誕生日だ。
「プレゼント、早めに渡しておいて良かった…」