恋涙〜賢者の石〜
□手紙
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手紙が届いた。別にソレはいつものこと。バーノンに届く領収書とかそんな類いのものが殆どだった。
「『階段下の物置?』」
やたらピンポイントな住所を書くお揃いの手紙――“H”と蝋で止めている。そしてもう一つは…
「『親愛なるリドル・トム・ヴォルデモート様―――――エリス・カダス』?」
ハリーと同じ分厚い手紙に隠されるようにあった白いシンプルな封筒。
学校の女子やら女性教諭、近所のマダムからのファンレターに混ざった宛名と名前だけの封筒にリドルは心惹かれた。
「…誰だろう」
呟きながらリドルは領収書をバーノンに渡した。不要なファンレターは全て暖炉の中にいれて、今手にあるのはハリーへの手紙と自分への二通の手紙。
朝食を用意していたハリーに手紙を渡そうとしたが、それを目敏くダドリーが気付きリドルの手から奪い取った。
「…あ?!それはハリーへの手紙だぞ!!」
白い手紙に気を取られていたリドルは慌ててハリーの手紙を奪い返そうとするが、バーノンの手にはハリーと同じお揃いの手紙が握られていた。
リドルはハリーと二人で手紙を取り返そうと躍起になったが破られ暖炉に入れられてしまえばもうどうしようもない。
何故なら先程リドルがファンレターを破棄するために火をつけたばかりだからだ。
「…ごめん、ハリー。僕が気を取られていたから」
「ううん、いいよ。元々、誰がくれたのかも判らないものだし…寧ろとばっちりを食ったのはリドルじゃない。僕のと一緒に棄てられちゃったじゃないか」
「別にいいよ。大したことじゃないはずだよ。僕達に共通に手紙を出すなら学校とかじゃないかな」
「…成る程。結局夏休みになるまで監禁されてたもんね」
ダドリーがハリーの手紙を読みたがっていたがハリーは既に興味を無くしたらしい。さっさと物置へと向かっていた。リドルは慌てて後を追ってきた。
「…あ」
「なに?」
「そういえば、僕、手紙を貰った」
「またいつものファンレターだろ?」
「…なんか、違うみたい」
リドルは手にしていた手紙をハリー渡した。ハリーがまじまじと手紙を見つめる。
「切手も消印もない」
「そうなんだ。しかも皆僕を『トム・リドル』って呼ぶのに…彼女は僕のフルネームを知ってる」
リドルは筆跡と名前から女性と判断したようだ。それについてはハリーも同意見だったが。
「…読む?」
「――…」