恋涙〜賢者の石〜


□お買い物 U
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 ハリーとリドルははぐれないよう手をしっかり握っていた。ダイアゴン横丁は始めて見るものばかりで目が足りないとハリーは思った。キョロキョロと周りを見ながら歩くハリーを然り気無く周りから護るように歩くリドルだったが、一つの店に釘付けになった。

「…洋裁店がある。ハリー、後で彼処で服を買おうよ。いつまでもダドリーのお下がりなんて嫌だろう?」
「…そうだね。そうしようかな」

 あわよくばハリーにワンピースを買ってあげたい。真っ白なフリルがついているような可愛らしいワンピースを。いっそスカートでも良い。女の子らしい服を着たハリーが見たい。そんな下心があるとは露知らず、ハリーは二つ返事で承諾した。


 グリンゴッツに着くや否やハリーとリドルは目の前にいる自分達の背丈の半分しかない“小鬼”に釘付けになった。

「…可愛くない」
「…ハリー、メルヘンを求めたら駄目だよ」

 そんなやり取りの中、ハグリッドが上着中の中身をひっくり返しながら自分達の鍵を出すところを見ていた。そして何やら手紙らしきものも。

「あの手紙は何?ハグリッド」
「あれは…ダンブルドアから極秘で頼まれた仕事でな。流石にお前ぇさんらにも秘密だ」
 ハグリッドは厳かに言うが、なんだか似合わないとリドルはかなり失礼な事を思いながら小鬼が手にした鍵を見つめていた。

「こちらは…エリスティーナ・カダス様の鍵ですね。遺産相続の手続きはお済みですか?」
「え?」
「あぁ…それならこれがそうだ」
「…確かに、本物ですね。誰かに三つの金庫を案内させましょう――…グリップフック!!」

 ハグリッドと小鬼の淡々とした会話にリドルは嫌な予感を感じた。今の言い方ではまるでエリスがこの世にいないような言い方だ。そう言えば…ハグリッドも『エリスが目の前で消えた』と、言っていた気がする。知らずに俯くリドルの手をハリーが握った。

「…ハリー」
「大丈夫だよ、手紙だって届いたじゃない。ね?」

 今度はハリーがリドルの手を引いてハグリッドの後に着いていった。

‡ ‡ ‡

「……二度と、トロッコなんかに…乗らないんだからっ…(泣)」
「大丈夫だよハリー、僕がついてるから、ね?(嗚呼っ!!泣いちゃうんなんて、何て可愛いんだハリーっ!!/////)」
「…ふ…っぇえぇええぇ…ッ」

 リドルに宥められながらグリップフックが開いた扉をハリーは眺めた。緑色の煙がモクモクと吹き出してきた。ハリーはカビでこんな色なのか、それとも魔法か何かでこんな色か気になったがそれが消えたときそんな考えが吹き飛んだ。

 煙から現れたのは金貨の山また山。高く積まれた銀貨の山。それに小さな銅貨までザックザクだ。

「僕、大金持ちだっ!!今年のリドルの誕生日とクリスマスプレゼント楽しみ!!何買おうかな♪」
「ハリー、自分に買いたいのとかないの?」
「特にない」

 いつの間にか笑顔が戻っているハリーにホッとしながらリドルはハグリッドの顔色が悪いこと気が付いた。それでもハグリッドは二人に魔法界の通貨の説明をしてくれた。
 その後リドルの金庫、基エリスの金庫はハリーと同じぐらいの量の財産にリドルが呆気に取られてたがリドルもクリスマスにハリーに何を買うか考えてしまった。あれだけあるとやはり色々と考えてしまう。
 そして例の手紙の金庫、“713番金庫”に向かいハグリッドが何かをポケットに入れるのを見届けて、ハリーが同意した“地獄のトロッコ”に乗り地上に戻った。
 具合が悪いハグリッドが『漏れ鍋』で元気薬を飲みたいと言い出したのに、リドルが人の良い笑顔を向けた。

「僕達は制服を作ってくるから“ゆっくり”休んでなよ♪」

 星が散るような輝かしい爽やかな微笑みだ。あまりの爽やかさに何やら黒さすら垣間見える。だがハリーはその黒さに気付かなかった。


「失礼します」
「…しまーす…」

 リドルの背中に隠れるように後に続いたハリーはキョロキョロと辺りを見つめる。傍にドレスから一般服…なのだろうか、様々なローブが並べられている。

「…リドル、普通の服がないよ」
「え?これとかハリーに似合うと思うよ?」
「…確かにチェック柄のワンピースは可愛いけど僕には似合わないよ」
「そんな事ないよ、これは?」
「なんでさっきからワンピースばっかりなの?僕ズボンが良い」
「えー…じゃあぁ…」

 ズラッと並ぶローブの脇に、リドルは見付けた可愛らしいワンピースやレースのスカートに何故かテンションが上がりそのまま奥へ消えてしまった。若干引き気味なハリーが後ろに下がったせいで誰かにぶつかってしまった。

「――っ!!…大丈夫か?」

 バランスを崩し倒れかたハリーをぶつかってしまった筈の少年が支えた。

「…あれ?」
「どうかしたか?」
「…えっと…君、男の子?」
「…………立派にな」
「ごっごめん!!凄く綺麗だから女の子だと思った!!」
「…良いさ、なれてるから」

 溜め息を吐く少年は色の濃いサングラスをしていたが、それでは隠しきれないほど驚くほどに美しかった。


 
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