恋涙〜賢者の石〜


□誕生日。君に誓う小さな決意
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「手紙…」
「さぁ、お前さんらのもんだ」

 大男に渡された手紙を二人はジッと見つめた。これがこの一週間の元凶の手紙か。意外とあっさり手元に現れたものだ。どうせなら手紙が勝手に朗読してくれれば良いのに。ハリーはボンヤリと思った。

「…手紙を出してたのはアンタだったの?」

 リドルは手紙を受け取らずに大男を睨み付けたままだ。一方のハリーは手紙をリドルの分まで受け取っている。

「いんや。俺じゃねぇ。俺はお前ぇさんらに手紙を持ってきただけだ。あ〜!!忘れるところだった。ハリー、お前ぇさんにプレゼントがあるんだ。まぁ少し俺がケツに引いちまったかもしれんが、味は変わらんだろう」

 そう言って大男はハリーに白い箱を渡した。ハリーはそれを首を傾げながら受け取り蓋を開けた。そこにはバースデーケーキがあった。ハリーは思わず笑顔でリドルを見る。リドルはケーキとハリーの笑顔に警戒を少し解いて大男を見る。するとバーノンが「家宅侵入罪ですぞ!!」と言いながら大男に出ていくように申し出た。

 大男はライフルをいとも簡単に螺曲げて棄てるとバーノンに「黙れ」と言っている。このハグリットの行動で、リドルは漸く大男を警戒することを止めた。バーノンを脅し黙らせるような男が自分達の敵のはずがないと確信したのだ。

「あんた誰。さっきから僕の質問はスルー?」
「おぉ!!自己紹介がまだだったな。俺の名前はルビウス・ハグリッド。ホグワーツの鍵と領地を護る番人をしちょる」
「ホグワーツ?」
「なにそれ」

 リドルとハリーは首を傾げる。初めて聞いた名前だ。すると大男――ハグリッドが信じられないと言った顔をした。

「ホグワーツを、知らんのか?!」
「…あの、はい」
「聞いたこともないよ」

 二人の返答にハリーは慌てて謝った。だがハグリッドは謝るのはダーズリー達を睨みながら謝るのは向こうだと言った。それだけでリドルの中でハグリッドの好感度は上がった。もっと言ってやれハグリッド!!目がそう言っている。

「お前ぇさんらが手紙を受け取ってないのは知っとったがホグワーツを知らんとは…お前ぇさんらの両親が一体何処であんなに学んだのか、不思議に思わなかったのか?」
「「何を?」」

 二人が同時に尋ねるとハグリッドが吼えた。


「『何を?』だと?!ちょっとまて?!」

 ハグリッドは仁王立ち、直ぐ様ダーズリーに詰め寄った。ダーズリー達は竦み上がって壁に張り付いている。

「この子が…この子達が何も知らんというのか?まったく、何にも?!」
「ちょっと言い過ぎじゃないの?僕、学校で一番の成績だったしハリーだって二番目だったんだから」

 自分達がまるで無知の様な言い方をされたリドルは剥れながらそう言ったんだ。ハリーも思わず頷いている。だがハグリッドは首を横に振った。

「ハリー、リドル。我々の世界の事だよ。つまりあんた達の世界。あんた達両親の世界だ」
「何の世界?」
「言ってる意味が判らないんだけど」
「なっ?!…じゃが、お前ぇさんの両親が有名なのは知っとるな?ハリー、お前ぇさんはもっと有名なんだ。それは知っとるな?!リドル、お前ぇさんもだ」

 二人は首を振った。するとハグリッドは当惑した眼差しで二人を見つめる。

「お前ぇさん達は、自分達が何者か知らんのだな?」

 ハグリッドがそう呟くと急にバーノンが会話を終わらせようと躍起になった。だがハグリッドが一睨みするだけで恐怖で縮こまった。
 今のハグリッドは怒りでワナワナと震えていた。
「貴様らは、何も話してやらなかったんだな?ダンブルドアがこの子達の為に残した手紙の中身を一度も?!俺はあの場にいて、手紙を書くのを見ていたんだぞ?!エリスティーナ・カダスが消える間際までリドルを抱き締めていたのも全部だ!!それを話さなかったのか?!」

「“エリスティーナ”…あの手紙!!」

 リドルは荷物を漁った。あの手紙を取り出して暖炉の傍に駆け寄ると震える手で封を切った。ハリーもそんなリドルの傍に寄り添った。

「『小さな魔法使い、リドル・ヴォルデモートへ


 突然のお手紙に戸惑っている事でしょう
 私もこんな状況で、手紙を書けることに戸惑いを隠せません。何せ自由に自分の意識が表に出なかったので。私は『闇の帝王』と呼ばれて世間に一番怖がられてるヴォルデモート卿と繋がっています。彼が死ねば私も死ぬ。なのに死んでないということは、彼も生きているということですね』…」
「魔法使い?リドルが?」

「そうだ…ハリー、お前ぇさんだってそうなんだぞ。お前ぇさんらは魔法使いだ。訓練さえ受けりゃそこいらの魔法使いより凄くなる。さぁ、手紙を読む時が来たようだ」


 
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