恋涙〜賢者の石〜


□やって来たのは巨大な郵便屋さん
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「ハリー、僕から離れないで」

 キュッと怯えながらハリーがリドルの背中のシャツを握り締めた。あぁっ、なんって可愛いんだハリー!!/////
 リドルは内心で悶えながらドアを見据えるのだった。







‡‡‡‡‡‡


「これで決まりだ!!」

 時間を巻き戻した日曜日。バーノンが叫んだ。リドルは低血圧な頭でバーノンを睨み付けている。どうやら機嫌が悪いらしい。

「…リドル、どうしたの?」
「…嫌な夢見た」

 眉間に深い皺を作ったリドルの頭を撫でた。

「どんな夢?」
「“あの夢”の方が全然まし」

 撫でる右手を掴んだリドルは甘えるようにハリーに抱き着いた。
 今日見た夢は今より少し大人びたハリーに「僕には好きな人がいるから…」と言って目を逸らされる夢。
 ハリーが誰かに盗られるなんて嫌だ。もしそうなったら…きっと僕は、狂ってしまうかもしれない。ハリーがいない世界なんて、価値がないただのガラクタだ。僕以外の人間の傍で幸せになるなんて許せない。

「…甘えん坊だなぁ」
「…こんな僕は、いや?」

 ふっ…と不安になったリドルはハリーを抱き締めていた手をほどいた。だがハリーが今度は優しくリドルを抱き締めた。

「全然…」

 ふわりと優しく笑うハリーは狡い。いとも簡単にリドルの心を手に入れてしまう。柔らかいエメラルドの輝きをリドルはジッと見つめた。

「リドルが甘えくれると、僕は、嬉しいよ」
「じゃあもっとくっついちゃうよ?」

 ハリーはリドルの更なる甘えん坊宣言にクスクスと小さく笑う。そしてゆっくり頷いた。リドルはそんなハリーの表情に安心していた。あぁ…なんて幸せなんだろう――…

「荷物を纏めろ?!五分後に出発する!!着替えだけを持つんだ!!いいな!!」

 リドルのその幸せな時間は僅か数分しか進まなかった。


 結果として、その後バーノンは皆を車に乗せて行き先を告げずに走り続けた。ハリーとリドルの服はたかがしれた量なので場所は取らず、二人で一つのバックに収まった。ダドリーはゲームやら何やらを鞄に積めようとしていたがリドルとバーノンにより没収されてしまいメソメソと泣いていた。

「…ぇ…」

「グスン…なんか言ったか?…トム」
「はぁ?なんで僕がお前に話し掛けなきゃいけないわけ?耳でも腐ったんじゃないの?」

 かなり酷い言いようにダドリーが泣きながら反論しようとした。だが…

「…『ぅるせぇ』っつったんだよ」


 
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