恋涙〜賢者の石〜
□手紙
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僕は、信じるより疑う方が好きだ。
『家族』なんて、一番信じられないものだし理解できない物だった。
「今日はご家族の方に手紙を書きましょう!」
誰に書けば良いの?家族って…なに?
そんな事を考えながら、渡された手紙を僕は、白紙で提出した記憶がぼんやりとある。
両親がいないから同情した目で見る周りが、嫌いだった。
だから僕から周りを遠ざけていた。
そんなある冬の日だった。
「…ねぇ、もっとまともに人を見れないの?」
「――…え?」
「そんな目、棄てておいでよ」
無理があるだろう?アホかコイツ。
「じゃあ、君もソレ、棄ててよ」
「…なにを?」
「ポーカーフェイス。作り笑いに愛想笑い。処世術なのは判るけど、僕にまで向けてこないで。何だかんだ不愉快だ」
そう指摘した後、暫くしたら君は僕の隣を歩くようになった。
君から僕に向かって「イライラする」って言ったんだろ?幼いながらに傷付いたんだぞ?なのに今じゃ「となりにいても良い?」って何それ?
だから冷たく振る舞った。そうすれば離れると思ったんだ。でも君は僕の隣を歩いた。僕の隣を座るようになった。
君だけが僕のそばにいてくれた。
「ハリー!!」
君が僕を呼ぶ。
「なに?リドル」
それは、誰にとっても当たり前なことでも…僕にとっては特別なこと。
「一緒にかえろ?」
「…うん」
だって、君だけが…僕を呼んでくれるから。
君だけが、僕を存在させてくれるから。
繋ぐ左手が暖かい。
「――…暖かい」
「今日は一段と冷えたからね」
きっと、リドルだから暖かいんだよ。
「…生まれてきてくれてありがとう」
君と見るから、灰色の世界が鮮やかに見えるんだ。
温もりも、世界も光も感情も…
「え?何か言った?」
「ううん、何でもないよ♪」
君が僕に与えてくれたから、君が僕を必要としてくれる間は…生きていられる。
君が、隣にいてくれるから…