恋涙〜賢者の石〜
□僕らを繋ぐモノ
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「ハリー、ハリーどこ?」
「こっちだよ」
まだ小さかった頃、ハリーはいつも一人で本を読んでいた。勿論リドルも読んでいたが(しかもその倍で無差別に)ハリーは興味があるものにだけ異様に熱中してしまう悪い癖があった。今も天文学関連と星座の本に埋もれていた。
「何読んでるの?」
「特殊相対性理論」
「…それは、五歳が読む内容かな?」
「よく言うよ。僕が借りる前に借りてるくせに」
二人は好む内容の種類も似ていた。どこが外見も似ているのに、不思議なことだ。二人には血の繋がりなんて無いはずなのに。
「…ねぇハリー」
「んー…?」
「僕は…君のとなりにいても良いのかな」
ハリーはいつも一人だった。それはダドリーに目をつけられているせいもあったが、リドルは自分にも原因があることを知っている。
「何さ、急に気持ち悪い」
「“気持ち悪い”は酷いなぁ…ただね、なんとなく思っただけだよ」
ハリーの事が好きだと自覚したのは最近になってから。
「…僕は別に君が今までみたいに僕を無視したりしても気にしないよ」
「――…」
「…だって…誰も僕を必要としないから」
ハリーはペラペラと本を捲る。ページを戻って何かを確かめているようだ。
「…君は僕を見るとイライラするんだろ?前にそう言ったじゃないか」
ハリーの声に表情はない。淡々としていて何処までも冷たかった。
「…だから僕は、君と話すのを止めたんだよ」
小さい頃…まだ三つの頃の話だった。あの頃は何故かハリーが視界に入るとイライラした。訳の判らない怒りが込み上げてきては暴力的に振る舞った。
「…なのに、今は僕の傍にいたがるんだね」
ハリーが小さく笑った。リドルはどうしていいか判らずに黙ってしまった。好きだと自覚してからはハリーの傍に居たくて堪らなくなったからだ。
「君が望むなら、いたら良い。僕は、拒んだりはしない」
ハリーは本を閉じてリドルを見つめた。
「どうせいつか、皆離れていなくなるんだからね」
「…ハリー?」
「ぅわ?!…凄いよリドル。僕、今立ったまま寝てた」
「…うん、知ってる」
ハリーは左胸を抑えながらリドルを見つめた。
リドルは、非の打ち所がないハンサムだ。年齢に関係無くモテるし告白だってよくされている。今も動物園の客は皆がリドルを見つめていた。