Story
□君探し
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満天の星空の下
必ず迎えに行くから
どどどどど、と。
魔法の森を閃光が駆け抜けた。
鬱蒼と茂った草木を薙ぎ倒し、光と火力を存分に蓄えた魔砲はまばゆく光を放つ。
「うん、上々だな」
ミニ八卦炉を手にした少女、霧雨魔理沙は頷いた。
最近はダブルスパークの強化版…マスタースパークをより高頻度で発生させる研究に没頭している。
構想自体は数年前からあったものの、魔力の関係かどうしても威力も弱くなってしまいがちであった。
しかし、弾幕なんていうのは強い火力で撃てた方が楽しいに決まっている、というのが彼女の信条。
最近は研究の成果と自身の魔法使いとしての成長も手伝い、完成形に近付いていた。
と、もう一発かまそうとしたところで、今までの疲れで集中力が切れたのか、術式が狂った。
暴発したそれは見事に自分を狙っていて、全身の血が一瞬で冷えた。
「…ッ、」
満身創痍を覚悟して身を固くした瞬間、斜めの方角から聞き覚えのある声が上がった。
「倫敦、お願い!」
放たれたスペルカードはレーザーを完全に消滅させるまでは至らなかったものの、残ったそれを回避できるだけの余裕をもたらした。
全てを避け切って見てみれば、レーザーの跡にはやはり何も残らない。
「いやー、相変わらず…って、アリス?」
先ほどの弾幕を張った少女、アリス・マーガトロイドを見れば、憮然とした表情。
よく見れば、蒼い瞳が濡れている。
「知らないわよ、あんたなんて」
「ちょ…アリス、」
そんな声も届かず、震える声だけを残してアリスは飛び去ってしまった。
「ちぇ、置いて行かれちまった」
ひとり残された魔理沙は、誰にともなく呟く。
アリスが、研究に打ち込みすぎる自分の心配をしてくれていたのは、分かっていた。
しかしそれはそれとして、一刻も早くこの強力な術式を完成させたかったのも事実。
アリスだってそれは知っているから、普段は干渉をしない。
ただ今回ばかりは昼夜とも分からぬ程それに没頭していて、挙句に何も言わずに魔理沙一人で検証実験をしているのだから、それは不安にもなるだろう。
きっと最初は黙って見ている予定だったのだろうが、このザマである。
「ま、ちょっと『過ぎた』かな」
トレードマークである魔法帽を被り直し、アリスの飛んでいった方向を見上げる。
夜空には、零れるような星たち。
こんな中を飛びながら、アリスは何を思ったんだろうか。
「そろそろ迎えに行かないと、また煩いからな」
と言いつつ、彼女の小言には慣れている。
だって、あれは彼女なりの愛情表現だから。
「さて…『ブレイジングスター』!」
星空の中、流れるように一筋の光が奔った。