ストーリー

□道化と水中花
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「―――時間にございます」


朝のほのかに冷たい空気の中抑揚のない低音。



朝とは言え常春の里は明るい

昨夜も遅くまで雑務に追われていた彼女は 眩しい朝日を恨めしげに見ると気怠い体を起こした





「おはようございます」



『傀儡』はぺこり。頭を下げる

「・・・さすがに堪えるな」



今朝は定期の召集がかかっている

またあの低血圧の同僚は我が主に絡むのだろう

翡翠は小さくため息をつく




不意に傍らから こぽぽ。と湯のそそがれる音


「・・・なんだ?」

「長様が翡翠様に と」





器の中には小さな塊がひとつ。



湯をそそがれるとそれは ふわり。と器の中に広がった



「これは・・」

「異国の茶と言われておりました
湯をそそぐと
乾いて枯れているように見えた花がもう一度生を得たように咲くのだと。」



「知っている」





李蜻は僅か思考し、 己が主に尋ねる


「お好きなのですか。」


翡翠はほんの少し笑みを浮かべた



「まあな」










道化と水中花
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