ストーリー
□我が無二の幼き君
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其れは遡る事 年前――
「・・くそ!」
黒髪にばしと木の葉が当たる
野山に響くのはただ蹄の音
彼は細い腕で懸命に その背にから振り落とされぬよう必死にしがみつく
突如現れた山犬に馬が驚き走り出して早数刻
山犬は居なくなったのか追って来ているのか
『彼』の腕は既に痺れ このまましがみつき続けるのは困難を極める
不意によぎる背筋を凍らせる感覚に彼はかぶりをふる
――助けなど来はしない!
だからこそ
だからこそ
私は絶対に負けたくなんか――!
不意に 体が宙に浮く感覚がした
我が無二の幼き君
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