ストーリー
□MEMORY OF SAPPHIRE
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「・・・今日はやけに冷える」
『此処』は常春だと言うのに。と従者は一人ごちる
主が風邪など召されぬように何か暖まるものを いや、そんなもの普段は必要ないのだ。そもそも置いてはいない
困った と廊下を早足で駆ける彼女を呼び止める者が居た
「なんだ旭」
「何も舌打ちしなくていいだろ」
へらりへらりと面から覗く口が弧を描く
苛立つ翡翠を気にとめる様子もなく 旭はマイペースに話を切り出す
「今日はえらく寒くねえ?」
「なら足袋なり草履なり履け
動物めが」
「いや じゃなくてよ」
翡翠は怪訝に旭を見る
「確か あの日も寒かったんだよな」
「お前 何を言って・・・」
そうだ 確かあの日もこのように冷える廊下を
あの日も
MEMORY OF SAPPHIRE