すとーりー
□霧雨
2ページ/26ページ
傘の人物が立ち止まり ふと見上げるは 一軒の豪華な屋敷
白い雪の中一軒だけ 大きな屋敷にも関わらず「ぽつり。」と 建っているように見える
深くかぶった傘の下の唇がかすかに動く
「――― 成る程、 逃げ場がなさそうだ」
そう誰に言うでも無く呟くと 屋敷の門をくぐった
屋敷内はがらんとしており 無駄と言える程広い庭、そこから見えるやたら豪華な母屋には人が居ないように思える
傘がくるりと周り 辺りを見回す
ふと、
「――― ちょっと それはこっちの膳だよ!」
女の怒鳴り声
振り向いた台所らしきやや古い一角では 複数の女中らしき者達がばたばたと何かの支度に終われている
「・・・ あんなものに気がつかないとは ―― 」
ぼそりと続ける
「―――『此処』は本当にヤバそうだ」
いつの間にか雪はやみ
積もったものをギシギシと踏みながら騒がしいそちらへと歩を進めた
.