ストーリー

□ストーリー
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とある古びた屋敷の主は悩んでいた。

子供の姿の彼の悩みは 自分の命が残り少ない事。
それを案じた『子供達』が 無茶をしようとしている事に。

彼は元々人ではなく ある人外の者達に造られた『人形』であり 長く使われたのち、自分の人生を生きる為 持ち主から逃れて今日まで過ごしてきた

しかし『電池』とも『命』とも言える物が残り少ない。
身体が そう語っていた



――― 創造者であればどうにか出来るだろう

だが承知の上の選択であり 覚悟は出来ていた。

ただ 自分を許すはずもない創造者に子供達が掛け合う事が怖かった
そこで過ごした自分には結果は見えているから

彼らとて自分は我が子と思っているが実際は立派な大人。 子供ではない。それが余計に怖かった



そんな折、人間のお偉い方々に見込まれ 『化け物退治』の依頼を受ける







不意をつかれ 全く反撃出来なかった
身動き出来ない程の傷を負ったが 二人の援護もあり 致命傷にはならなかった

だが 二人にも手に負える相手ではなかった

これまでも退治に来た者達も多かったのだろう 顔色一つ変えず応戦している

少しでも手助けをと 身体を起こした自分を庇おうとしたのか 犬類独特の甲高い声が響き 目前が朱に染まった


息はあるが かなりの傷だった 早急な処置が必要だった
最初の不意打ちで 痛む身体を無理矢理奮い立たせ 向き直ると

『化け物』はこちらを伺っていた。 そこに立ったまま 先程までとは違い、探るように。
その様子に こちらも戸惑った そして沈黙を破るように最悪の客が乱入した


逃げ出した人形を自尊心の強い彼らが放って置く訳はなく 常に処分の機会を伺っていた
今までにも 何度も襲撃を受けたが 自分とて最高傑作と言われた物。 やすやすとやられはしなかった


だが今はとても太刀打ち出来る状態ではなく 更に相手は今までで最多だった

今度こそはと確実に仕留める意だと解った。 つけられていた と。


だが 絶望にも似た感覚は 次の瞬間かき消えた
仕留められたのは 追跡者達の方だった。

辺り一面を朱に染め『化け物』は帰って行った

自分を狩りに来た者を何故許したのか
あの時 何を思ったのか



その日、その場に『ある物』を残し 家路に着いた







それから数日後 彼は尋ねて来た 僕が残した物を届けに。




そして彼に僕はこう言った













『――― 手を貸しては頂けませんか?』




何もせず諦める姿など 遺したくないから ―――


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