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□夏といえば海というベタな発想
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冷たいアイスティーでルッスとおしゃべりするのが、暑くなってきたここ最近の日課になりつつある。
「夏といえば海よねぇ〜」
「海かぁー、あたし海で泳いだことないんだよねー」
「あら、じゃあ今度のデートは海に行ってらっしゃいよ!スクちゃんだって喜ぶわよぉ」
「海でデート…いいかも」
ベタなイベントは体験しておきたい質のあたしにとって、このシーズンは逃すわけにはいかない。
「というわけで海に行きたいですスクアーロ隊長!」
「駄目だ」
「え、何で?」
「そ、それはだなぁ…海には怖い鮫がいてだな」
「鮫は人が泳ぐような浅瀬には来ないよ」
「く、クラゲに刺されたら大変だろぉ!」
「気を付けるよ、子どもじゃないんだから」
「ゔ…とにかく駄目だぁ!!」
せっかくお願いしたのに、意味不明の理由で却下されてしまった。喜ぶ、ってルッスは言ってたのに。よくわかんないけど。
新聞を読むスクアーロの腕に絡み付いて揺する。駄々をこねる子どもみたいだけど、納得する理由を聞くまでは諦められない。
「ねー何でダメなのー?」
「だから紫外線がだなぁ!」
「日焼け対策は毎日してます!」
「水着じゃどうしたって焼けるだろうがぁ!」
「水着だって気を付ければ…え、水着?何で?」
「何でって…泳ぐんだろぉ?」
「泳ぐ…あ、そっか、海だもんね…」
「意味わかんねぇぞぉ」
今度はスクアーロがあたしの言葉に首をかしげる番だった。
海で泳いだことのないあたしのイメージでは、海といえば貝殻を拾って砂のお城をつくるところ。波打ち際で水かけっこが限界で、泳ぐことなんか頭になかった。スクアーロの水着姿が浮かんできて、急に恥ずかしくなる。ルッスが言ってたのはこういうことか。
「お、泳ぐこと考えてなかった…」
「はぁ?じゃあ何しに行くつもりだったんだぁ?」
「こう、浜辺で追いかけっこ、的な」
「漫画の読みすぎだろ…」
「だって泳いだことないんだもん…スクアーロは何でダメって言ったのよ!」
まさか本当にクラゲや紫外線を心配しているわけではあるまい。照れ隠し半分で聞いてみたら、低い声で唸ってそっぽを向いた。ひとつにまとめた髪の間から見える耳が赤い。
「スクアーロ…?」
「…見せたくねぇんだよ」
「えと、それは」
「お前の水着姿を他の野郎に見せたくねぇって言ってんだぁ!文句あるかぁ!!」
「文句はないですけど!」
またそっぽを向いたスクアーロが普通の男の子みたいで(歳上の男性に使う表現じゃないけど)、胸の奥がきゅんとした。やだ、可愛い。
「スク、あのさ」
「…何だぁ」
「ちゅーしてもいいかな」
「こっちのセリフだ、バカ」
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楽しい夏休みをお過ごしください(^ω^)