紅月日和(連載)
□第二章:王の叫び
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「くそっ…!」
大王を救えなかった。
目の前で大王が
大王が……!
黒い魂は全て消えた。跡形もなく。
…いや、正しくは消えちゃいない。大王もろともどこかに移動しただけだ。
「…捜さなきゃ」
でもどうやって?
ここは冥界。
僕は鬼。
もし、現世に連れていかれたとしたら、僕はどうすることも出来ない。
大王なら現世と冥界の行き来ぐらい自由だが、僕はそうもいかない。
「………っ」
やはり僕は無力だ。
でも、それでも、
僕は大王を救いたい。
――タッタッタッ………
何処からともなく足音が聞こえる。
「――誰だ…!」
「あ、す、すみません!僕です、ゴメスです……」
そこに立っていたのは天国にいたゴメスさん、善ゴメスさんだった。