紅月日和(連載)
□第二章:王の叫び
2ページ/5ページ
「俺は罪深いから、こうなるのが定め…だから……」
「何が定めですか、大王らしくない!
冥界の王は貴方なんですよ!?」
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ!
大王が居なくなったら冥界は、死者は、生者は、僕は……っ!!
大王の手は、冷たく力無かった。
僕の手を握り返しもしない、まるで諦めたかのように。
「大王、このまま飲み込まれては駄目です!」
「…でも、それで地獄の死者達の怒りが収まるのなら…」
――――っ!!!
「うるせぇ!大王イカ!!僕はアンタが居なくなったら困るんだよっ!!!」
「…お……におく…」
大王の手がピクリと動き、僕の手を強く握ってきた。
「俺だって…、本当は鬼男君ともっと一緒にいた…いし…、一緒に………この冥界を………!」
――その刹那、スルリと大王の手がすり抜けた。
「…大……おっ!!」
闇が、クスクス笑いながら消えていく。大王もろとも。
最後に見た大王の顔は涙でぐしゃぐしゃで、
何度も声にならぬ声で僕の名を叫んでるかのようだった。
黒い魂が去った後そこには、『大王』と書かれた帽子のみが残されていた。