紅月日和(連載)
□第一章:動き出す歯車
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「…大王、疲れているなら休んだ方が……」
「いや、大丈夫。鬼男君にいつも仕事任せっぱなしだもの。やる気がある時くらい、バーーッとやらせてよ」
では何故、あんな悲しそうな顔であんなこと言ったんですか?
…とは訊けなかった。
いつものように夜がやってくる。
ひっそりと、静かに。
「鬼男君、ちょっと地獄の様子見に行くからついて来てくれないかな?」
「分かりました」
地獄は暗く、熱い。
業火の中で叫ぶ者達、項垂れている者達……。
沢山の死者が視界に入る。
「…おい」
一人の死者がふと、声をかけてきた。
「わ、悪ゴメスさん、久しぶり!」
大王が振り向いた先には、厳つい死者が構えていた。
「お前らのせいで俺もこの様だ」
「いや、それは自分の前科のせいでしょう?」
ムッとし、僕は言い返してやった。
「まぁ、それを言われりゃ終わりだが…。まぁ、何はともあれ、母親にも会えたしな」
悪ゴメスさんは前に天国にいる母親に会う為、無理やり天国に入ったことがあった。
それからイロイロあったのだが、最終的に母親に会えたのだ。
「まぁ、一度別の母親を連れて来られた時には唖然としたがな」
「あ、あぁ…、善ゴメスさんの………」
ゴメスはゴメスでも、天国にいる方の善ゴメスさん。
その母親を大王が間違えて連れてきた。
……そんなこともあったなぁ…………。