紅月日和(連載)
□第一章:動き出す歯車
1ページ/5ページ
冥界、それは生を受けたもの全てが行き着く場所。
今までの生きてきた軌跡を問われ、見られ、裁かれる。
天国。そこに行き着く者は皆、安らかなる時を過ごすこととなる。
地獄。そこに行き着く者は皆、生前の行いに囚われ続ける業火の中、悶え苦しむこととなる。
「…鬼男君?」
「はい、何でしょう」
仕事をする手がピタリと止まる。
珍しく黙々と仕事をこなしていた大王がふと、こちらを見つめる。
「鬼男君は、地獄に堕ちてみたい?」
「いや、それは遠慮したいんですが…」
「…だよねー、普通そうだよねーー…」
「誰でも、死後は安らかに過ごしたいに決まってます」
「…だからこそだよ」
「……?」
「もしさ、世界を救う為に人を殺めた人がいるとするよ?
その人には、殺人という罪があるから、例え世界を救ったとしても地獄に堕とさなきゃいけない」
「………。」
「俺は閻魔大王だから、罪を見過ごす訳にはいかない。
でも、でもさ…」