紅月日和(連載)
□第二章:王の叫び
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「大王っっ!!!」
地獄に行くと真っ暗だった。
…というより、黒い魂で満ちていた。
「こ、これは…っ」
侵食されていく地獄。
門を砕き、闇に染めていく。
「まさか…大王っ!」
僕は闇の中に飛び込もうとした。
「来ちゃ駄目だ!」
闇の中で響く、大王の声。
「来たら君まで飲み込まれる!これは、俺のせ…い……だか…ら!」
「大王のせいって、何故……っ」
「この…、黒いのは全部地獄に堕とされた死者の魂なんだ!
死者達の負の念に、地獄自体が耐えられなかったらしく…て…」
かすかに見える大王の顔。
その目には涙があった。
「つまりは地獄に堕ちた者達の反乱……。
こいつらの狙いは俺だよ!鬼男君は来ちゃ駄目っ!!」
「駄目です!今助けます、大王!」
僕は大王の手を探り、掴んだ。
しかし、その手を引っ張っても、大王はドンドン闇に引きずり込まれていく。