短編

□冷たい手
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俺は名無しさんの部屋に向かうために屋敷の長い廊下を歩いていた。

「なんで俺が・・・」



事の始まりは数分前、

「は? 名無しさんが風邪ひいた?」

「うん、季節の変わり目だからねぇ。お見舞い行ってあげたら?」

そう言ってマスターに部屋を追い出された。
なんで俺が行かなきゃならんのだとは思ったが、俺の足は自然と名無しさんの部屋へ向かっていた。

別に心配してるわけじゃあ無い。ただ、乱闘の参加者の健康を管理するのも俺たちの役目だから様子を見に行くだけで・・・
そんな事を考えていたら、いつの間にか名無しさんの部屋の前に到着していた。

小さくノックをすると、中から小さな声で返事が返って来た。俺はドアを開け室内に入る。

「風邪ひいたんだってな。」

「うん。ていうか、まさかあんたがお見舞いに来るとは思わなかった。いっつも冷たいのに」

「皮肉か」

名無しさんは別にそんなんじゃないけどーと笑いながら言う。
ベットの隣にあった椅子に座り、マスターや乱闘メンバー達から預かった物を渡した。

「皆がお前にと」

「え、本当?わぁ、後で皆にお礼言わなくっちゃ!」

名無しさんはメンバー達から贈られた物の数々を見てはしゃいでいる。
普段の言動は大人びている名無しさんだが、病気の時は子供のような振る舞いもするようだ。
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