短編

□お昼寝の時間
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「ふぁ〜」

「う、ちょっと名無しさん、膝痛い。」

木漏れ日溢れる午後のひと時、お昼寝。
名無しさんはリンクに膝枕をしてもらい、リンクは木に寄りかかった格好で昼寝をしていた。

「気持ちいいね〜外で寝るとやっぱり。」

「そうだなー俺は結構慣れちゃった感があるけど。」

「平和の中でのお昼寝と、戦いの渦中での休憩は全然違うんじゃないかな」


ただ寝っ転がって二人で会話をする。

甘いお菓子と暖かな紅茶を飲みながらする会話もいいけれど。
ふかふか布団の中でまどろむひとときもいいけれど。

暖かな木漏れ日に包まれた、まどろみの中の会話が二人は一番好きだった。


目が覚めたら二人とも、お互いをはじめに想う。
また背中を合わせて会話する。お互いの目を見て会話する。
会話に飽きたら昼寝をしよう。たまには木の上で寝てみよう。

それを毎週、毎日繰り返す。


いつのころからか、それが当たり前になって。
日課になっていた。

手を繋いだことも無い清い関係。
本当に恋仲なのかもわからない。


ただ二人とも、お互いが居ればそれで安心できた。
飾らない自分で、素のままでいられる時間。

「時間が止まっちゃえばいいのに。」

「ずっと寝続けるのか?それって意外とキツイぞ」

「違うよ。たまには目を覚まして、二人で話して。」

「なんだ、いっつもしてる事じゃんか」

「必ず夜は来るし、雨の日もあるじゃないー」


名無しさんが頬を膨らまして言う。
すると、リンクが子供のように笑い出した。そして、名無しさんの頬をつんつんとつつく。

「はははっおもしろい顔ー!」

「ちょ、そんなに笑わなくたってー!」

「ははははっ」


恋人と言うより親友のような微妙な関係。
お互い、今更『好き』と素直に言うのは抵抗があったのだ。


本当に好きだからこそ簡単に口に出せない言葉―――



「でも、本当にずっと一緒にいられたらなって思うんだ」

「ああ、それは俺もそう思う。」

「でも私達は、産まれた世界も時間軸も全然違う。いずれ、それぞれの世界へ帰る時がきっと来る。」

「・・・あぁ。」

「だから、止まっちゃえばいいなって。」

「そっか・・・。」



リンクが目を閉じたので、名無しさんも一眠りしようと、目を瞑った時、リンクが高らかに声を上げた。


「俺らの世界に来ちゃえば良いんだよ!名無しさんが!」

「え、えぇ!?そんないきなりだなぁ。」

「だって、なんか素で忘れてたけど、俺たち恋人じゃん?」

「う、うん・・・(忘れられてた・・・)」

「だったら、結婚生活を思い浮かべたって別にいいじゃないか」

「そうなのかな・・・」

名無しさんは、しばらく考え込むと、苦笑いを浮かべ

「まぁ・・・元の世界に戻ったって、何もすること無いし・・・ね。それも、いいかもしれない」


そう言った。
すると、リンクもそうだよと、笑顔を浮かべて答えた。

「じゃー、色々解決した所で、もうひと眠りするか!」

リンクの暢気な声。
その声に、きっと楽しいであろう未来の生活を重ね、名無しさんは一人、微笑んだ。


(きっとリンクは良い旦那さんになるんだろうなぁ。)

「名無しさん、寝ないのかー?」

「寝る寝るー!」


二人で木の下に寝っ転がって、目を瞑った。

まどろんでいる自分の恋人を見たリンクは、名無しさんの手を握った。
その手は、名無しさんの手によって握り返され。

二人で手を握ったまま、眠りに就いた。

きっと二人が目覚めたら辺りは真っ暗だろう。
そうしたら手を繋いで帰る。

ずっとずっと、最期の一瞬まで繰り返されるであろう日常。

二人は、夢の中で大切な恋人の夢を見ているのだった。




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