短編

□愛情の枷
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目覚めると、そこはいつもの見慣れた光景はなく、色鮮やかな世界から一転、色のない部屋

無機質な頑丈そうな扉、石の壁、暗い部屋に揺蕩う蝋燭、石畳の上に敷かれた絨毯、鉄格子の嵌った、腕一本通るので精一杯であろう小窓…
更にはある程度の生活は営めるであろう家具が一揃え用意してあった。

更には私の足に嵌められた、足枷…
鎖が途中から消失していてどこから伸びているのかはわからないが、軽く足を動かすと、確かに私をその場に留まらせようという、感覚。

状況を飲み込めずにいると、カツ、カツと扉の向こうから無機質な音が響く。

ギィ、という音とともにドアノブが回され、扉が押し開かれる。

そこから現れた人物(といっていいのかはわからないが…)に、動揺を隠せず、震える声で声を掛ける。

「ま、マス、ター…クレイ、ジー…?」

見た目だけは似ているその2人…は、私が大好きな世界の、神、のような存在。
2人とも普段から何かと優しくしてくれていて、私も彼らを信頼していた。
この状況を引き起こしたのがこの何よりも信頼している2人だと、私は暫く飲み込めなかった。

それぞれが靴の音を響かせながら、私の座るベッドの両脇に近付き、腰掛ける

クレイジーがその左手を伸ばし、私の足にかけられた重く、重量のある枷を細長く柔らかな指先で、すっ、となでる。

「なかなか、似合ってるじゃないか」

そう笑いながらクレイジーはそう言葉を発する。
その言葉に私は眉を顰める。

「ねえ、これは何…?ここは何処…?」

そう、意を決して溢れる疑問を彼らに投げ掛ける。

すると、マスターがぽんぽん、と彼女の頭を軽く撫で、口を開く。

「外は危ないものが沢山あるでしょう?だから私達が守ってあげようと思って…」
「言ってる意味が、よくわからないんだけど…」
「何か欲しいものある?何でも創ってあげよう。」

会話のキャッチボールにならない。
どう考えてもいつもの彼らではなかった。

「馬鹿だなマスター!名無しさんには俺達以外には何もいらない!そう、決めたんじゃないか」
「ああ、そうだった!」

当事者である私を置き去りにして目の前で繰り広げられる会話…
得体の知れない恐怖…
まるで背を蛇が這っているかのような、ぞっとした恐怖に襲われる。

喉に言葉がつっかえて、中々声が出せずにいたが、やっとの思いで震える声を絞り出す。

「な、何言ってる、の?決めたって、何…?なにもいらないから、この足枷、外して、この部屋から出して……」

彼らはきょとんとして顔を見合わせ、クスクスと笑い声を零す。

「名無しさんこそなに言ってるの…?」
「おかしなやつだな」

おかしなのはどう考えても彼らの方。
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