短編

□これからも変わらずに
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「クレイジー!」

「えへへ、クレイジー」

「…クレイジーっっ!何してるのよ」

初めて出会ったあの時から果たして何年、何日、何時間、何分、何秒が経ったのだろうか

喜び、怒り、ありとあらゆる感情を経験してきた

そして何度名無しさんは俺の名前を呼んで、そして何度俺は名無しさんの名前を呼んだのだろうか。

「名無しさん…」

「なに?クレイジー」

「……好きだ…」

「…どうしたの?いつもは言わないのに」

名無しさんは首を傾げながら俺の頰に手を添える。
それを軽く握り返し、名無しさんの手のひらに頰を着けると、じんわりと手から伝わる名無しさんの、体温

「…暖かい、な、人間の…体温」

「…クレイジーが低すぎるんだよ」

「そりゃそうだ」

人間じゃないんだし

「名無しさんも、よくこんな…得体の知れない化物の側に居ようと思ったよな」

「…自分のことそういう風に言わないの。…私にとっては…大切な恋人なんだから」

「名無しさん…」

そのまま腕を引き寄せ、強く抱きしめる。
その体温をじんわりとじんわりと、全身に感じる…

「名無しさん」

「なぁに、クレイジー」

「…これからも」

俺の傍に居て欲しい、なんて 言葉にしてしまったら

「……」

「クレイジー?」

永遠に離したくなくなってしまう…

「クレイジー」

名無しさんに名前を呼ばれ、視線を遣る

「私、ずっとクレイジーの傍にいるから…これからも、今までみたいにずっと。」

「っ…」

上目遣いで視線と視線を合わせ、そう言う名無しさんに心の枷が外れたような

「ん、っ…」

軽く腰を屈めて唇を重ねる…

「ん………」

「…名無しさん…!」

「…いつもより、軽いの、なんで?」

そんなの決まっている

「止められなく…なる」

「…いいのに」

いつものことでしょう、なんて笑う名無しさんが…あぁ、なんて愛おしい。
狂おしく…

「…後悔するなよ」

「しないよ」

「いつか飽きるかも」

「私がそんな薄情に見えるの?」

「……」

名無しさんの腰に手を回し、きつく抱き寄せ、いつものように、深いキスをする。
深夜0時過ぎ

出会いの記念の日の始まり

名無しさんと出会った日の事、忘れっぽい俺でも鮮明に覚えている。

これからも、忘れたりしない

だから

「俺の傍にいてくれ」

これからも変わらずに



end-
 

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