短編
□これからの僕らの未来へ
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ふと窓の外を見れば、こんな良き日にふさわしい蒼天が広がっていた。
僕はおもむろに簡素なイスから立ち上がると、木の扉を開き部屋の外へ出る。
僕の居た部屋の隣のドアをノックすれば、中から「どうぞ」という可愛らしい声が聞こえる。
古めかしい扉のドアノブを捻ればガチャリ、という小気味のいい音が響き、煩い音を立てながら扉は開く。
まあそんな煩い音すらも今の僕には天使の声のように幸せな音に聞こえるのだが。
そして僕の視界に飛び込んできたのは雲のように、いや、天使の翼とでも言おうか。
純白のドレスを身に纏った名無しさん。
真っ白でコーヒーカップのように裾の広がったドレス。
胸元・・・鎖骨のあたりから肩、背中にかけて開かれたデザインのそのドレスは、まさに花嫁というに相応しい物だった。
それを纏っている人物・・・今日より僕の妻になる彼女、名無しさんはそのドレスに白い肌と美しい髪が映えて見る者の視線を釘付けにしてしまうだろう。
「ルフレ」
僕の名前を呼び照れたように、しかし嬉しそうにも微笑む彼女に僕も自然と笑みが零れた。
「名無しさん、綺麗だ・・・」
そう口をついて出た言葉に、名無しさんは頬を染めた。
さながらこの教会の庭園に広がるピンク色の薔薇の花のように。
多幸感というのはこういうものなのだろうか、とふわふわする頭を必死に回転させる。
気付けにとピンク色の花言葉はなんだったかな、などと頭の片隅で考えていると、扉を軽くノックし、女性が入室し「お時間です。」と一言。
その言葉に名無しさんは、眩しい位の笑顔で「また後で!」と踵を翻し女性の後に続いて退室して行った。
・・・さて、僕もそろそろ出ようかな。