僕らの生きる道

□ね
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水の中は、異様にも透明だった。目はハッキリ見えるし、何かしらおかしい



中に引き込まれた時に立った気泡が全て水面に上がると、目の前はすごく開け、湖の底が見えるくらい透明



足を押さえていた拘束はほどけている
すっかり自由になった足をバタつかせ、ついでだと思いながら下に潜った




不思議と、息の苦しさは無かった





「(あれは……)」

少し進んだ場所に、何かがある。上から射す光よりもまばゆい光だ




「(眩し……)」
水の中で目をほそめ、それでも光を見た


360度、しっかり照らしている"何か"は湖の最も深い最深部らしい

光るそれにむかって斜面があるからだ



こんなに潜っていても息苦しさがない……不審に思いながらも光る"何か"へと泳ぎを進める




《…コ…ニ……ル》


「(なに?)」
水が震え、声がした
どこからともなく、声が聞こえるのだ

《ココ……ニ…ア…ル》

「(ここにある?……何が)」
ものらしいものはあの光しかない
それならと光へ急いだ



《アル…ジ……キヅ…ケ
ワタシハ……ココニ…アル
ハヤ…クミツケテ………クレ》


近付くたび声がハッキリしてくる



「(まさか、イノセンスの"意思"?)」

水中で一度とどまる

「(それが空気の代わりに水を揺らして声を響かせている?

……そもそもイノセンスに意思がみられるのかしら)」



ともかく、イノセンスともなれば水上の皆に言わなければ…

その時、真上を向くと真上に波紋と人影が見えた



「(リナリー?)」

そう思いながら、水面へと進んだ






「ぷはっ!」

水上に出れたらしい。眩しい日光を背に受け、リナリーが目の前にいた


「ファル!」

良かった、と表情が安堵に変わる


リナリーは、黒い靴(ダークブーツ)第二解放"繋累" 水上の踏技《水枷》により水面に立っていた



「上がってこないから心配したのよ?アレン君も神田も今は潜ってるわ」


「じゃあ、早く呼び戻さないと。」

ティー、と呼ぶと濡れた服の中からゴーレムが顔を出す


「(どこにいたのかしら…)」



「中にアレンとユウがいるから連れてきて、大事な話があるわ」

そういえば、体全体を使って頷き、水の中に突入した


「だ、大丈夫なの?ゴーレムなのに……」

「ん。防水加工してもらってるから」
完璧にね、と自信満々に言った



***


アレンとユウも湖からあがり、各々着替えをすませていた

ファルは替えの団服で毛布にくるまり、リナリー作のホットミルクを戴いていた




「あの、大切な話ってなんですか?」

「……ここのイノセンスのこと。
何かおかしいの、意思があるみたいに」


「"意思"……ですか?」


「そう。『ココニアル』『アルジ、キヅケ、ワタシハココニアル、ハヤクミツケテクレ』


あの湖に入った時に聞こえたの
ついでにあの中で呼吸困難にならなかったし
呼吸困難にならなかったのがはイノセンスのお陰だとしても声は明らかにイノセンスの奇怪のせいじゃないでしょ」



ズズ…と甘めのミルクを啜る


「私的には、イノセンスが喋るなんかとか意思があるとかは信じたくはないけど
水の中に喋れる動物はいないし。
第一、イノセンスは適合者を選ぶという意思はあるんだろうね

だからって喋るかは知らないけど」


はぁ、と溜め息をついて肩を落とした



「(さすがに科学班だけあって頭まわるの早い…)」
アレンが呆然としながら話を聞く



「いっとくけど、伊達に一桁の歳から教団にいるわけじゃないし。」

アレンの思考を読んだように言う。案の定、アレンは驚く


「な、何で!!??」


「そんな顔してた。
てか、真面目に考えなさい」



「ファル、もしかしてだけどここのイノセンスって……」

リナリーが考え込むように顎へと手を遣る

「ファル自身のイノセンスじゃない?」



「……………………なるほど!
忘れていたかのようにポンッと手を打った


確かにそれなら頷ける



「じゃ、もっかい潜る?」

「前にも言ったけど、一人になったらだめ。水の中だって何があるか分からないんだから」
ビシッ、とファルを指差し言う


「じゃあ案があるの?
水の中にあるイノセンスは潜るしかないじゃない」

「そ、それは…」

モゴモゴと口ごもり、言葉はない



「ほら、ね。
大丈夫よ。五分で戻るから」
す…っと立ち上がり、湖を拝んだ



どこまでも澄んだ水は、ファルを誘うように風に波を起こしている



ドォンッ

湖に…………何かが落ちた

「!!――――ッ」


声にならない声を上げ、湖の湖面。中心部を見つめた
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