SHINING DAY

□抱きしめてあげるね
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放課後の最終下校寸前。

資料を整頓していた保健室にやって来たのは、最近サッカー部のキャプテンに就任したばかりの神童拓人だった。


「……香織さん」

「拓人。どうしたの?入っておいで」


もう時間的に保健室はcloseの札がかかっていて、普通なら生徒は入れないけれど拓人は別。

今日は蘭丸が一緒じゃない、ということは。
ドアを開けたまま突っ立っている拓人を呼び寄せると、案の定彼の顔色は暗かった。


(あちゃー、また何か無理したな。)


小さい頃から泣き虫だった拓人。
中学に上がってからは強くなって人前で泣かなくなっていたけれど、やっぱり辛いことが重なって精神的に耐えられなくなったらこうやって泣きに来る。

キャプテンという立場は周りを纏めたり指示を出したり、思ったよりも責任感のある大変な役目なのだ。
まだ若干14歳の彼がその重みに耐えられなくなって立ち止まったって、何もおかしなことじゃない。



「香織さん…、俺…」

「いいよ、私はここに居るから好きなだけ泣いて、拓人。」


優しく頭を撫でるとついに決壊した涙の粒をボロボロ流しながら泣きついてきた拓人の体をそっと抱きしめてあげる。

よしよしと背中をさすると、拓人は顔を私の肩にこすりつけた。

じわりじわり、着ている白衣が拓人の涙で濡れていく。

泣きながら、ポツリポツリとこぼす小さな声を私は静かに聞いていた。


「…ふ、うっ…」

「拓人も頑張ったね」

「香織さんっ…」

「うんうんよしよし」


どのくらいそうしていたかな。
とにかく長い時間、そうやって拓人をあやし続けた。










しばらく頭を撫で続けていると、私にしがみついていた拓人もだんだんと落ち着きを取り戻してきたようだ。


目を赤くしながらも体を離した拓人に、昔から泣き止む合図にやっていたいい子いい子をしてやる。
ポンポンと軽く手を置くように拓人の頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細める彼のなんと可愛いことか。




「ちょっとは落ち着いた?」

「はい…ありがとうございます。…少し、元気出ました。」

「それは良かった」


頬に残る雫を指先で拭ってから、私はチラリと時計を見、窓の外を見やる。

うわ、すっかり真っ暗。あんまり残ると見回りの人が困るよね。


まだ私よりもずいぶん背の低い彼の手を引いて、簡易ベッドの方へ連れて歩いて。


「最終下校時間も回ったし、今日は家まで送ってってあげるよ。
もう少し片付けが残ってるから拓人はここで寝てなさいな。」


布団をかけて前髪を撫でるよう額に手を置くと、ようやく花が綻んだように笑った。








2012/12/11

豆腐メンタルキャプテンおいしいです^^^

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