短編

□よくある夏の日のこと
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「悠太ー祐希ー」

ここは浅羽家のリビング。
私はソファに座っていて、私を挟むように左右に座った双子の名前を呼んだ。

「ん?」と、悠太が顔を覗き込みながら聞いてくる。



「この体制はなんですか」


とりあえず聞いてみた。
鈍感な双子のことだから、返事は思っていた通り


「なんですかって…」

「なにがですか?」


案の定わかっていないように先に悠太が口を開けて、祐希が続けた。
二人の目は眠そうながらも相変わらずのイケメン。

しかし私は黙っている訳にはいかないのだ。



「二人とも、重いんですけど」


そう、重い。
なぜならば今の私の膝には祐希の頭が、肩には悠太がもたれてきているからだ。
なんか二人ともさも当たり前みたいに人にのっかかってくるからたちが悪い。



「えーいいじゃん。名前ちょうどいい高さなんだもん」

「もんじゃありません悠太君。」

「名前の太もも、柔らかくて気持ちいい…」

「その発言はセクハラっぽいですよ祐希君?」


しかもそれは私が太ってるとか言いたいのか祐希、失礼な!
と思っていたら「違うよ」と祐希。
あらま、声にでていたらしい。


「っていうか今更じゃん?」

「なにが?」


悠太が私の髪の毛を指で梳きながら言う。


「こんな、くっついてたりするの」

「う…」


そう言われると、…まぁそうなのだ。


私、悠太、祐希は幼稚園から一緒の幼なじみ。
家が近いってことでいつも何かと一緒にいたし、小さい頃からお互いの家に行き来したり泊まったりするのはよくあった。

双子はやけにスキンシップをしてくるから抱きついたり抱きしめられたりは日常茶飯事で慣れてしまった。
それに、私も二人が嫌いなわけじゃない。

むしろ高校生にもなって変わらずスキンシップをはかってくれるのは嬉しかったりする。


今回も、ただ口に出してみただけ。


「でも私ばっかり重たくて苦しいし。
二人は自分がでかくて重いんだってことを、もうちょっと自覚した方がいいよ」

「…だってさ祐希、降りてあげたら」

「悠太こそ。名前がの背が縮むよ」

「ないない」

「いや、案外人って簡単に縮むかもよ」


そう言って言い合いを始める双子。
まったく、離れる気ゼロである。



「…はぁ、」


まあいっか。

右肩に乗った悠太の頭にコツリと自分の頭を当てると、悠太が嬉しそうに手を繋いで指を絡める。
余った左手で祐希の頭を撫でてやると、祐希は目を細めた。



「……名前ってさー」

「んー?」

「俺らのこと大好きだよね」

「うん?当たり前じゃん」

「そっかー」

「そうだー」


答えに満足したのか、
祐希が腰にぎゅっと抱きついてくる。


「俺も好きー」

「…ありがとー」

「俺もだからね」

「うん、ありがとー」


なんだこの好き好き合戦は。
何となく始まったから恥ずかしげもなくこの告白まがいな応酬を繰り返しているけど、ここが学校で要あたりがいたら「何言ってんだアホかお前ら!」とか言って頭叩かれそうだ。うん。


でもゆったりとしたその時間が心地よくて、私は静かに目を閉じた。


(君たちとならこれからもいつだって、
ずっと一緒にいると思うんだ)


2011/10/18
双子サンドされたい

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