短編

□まどろみの中で
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「アリス」


「……チェシャ猫?」


「どうかしたのかい、アリス」


そういって見上げる猫の生首に、わたしは微笑んで答える。


「……突然、歪みの国のみんなやあなたがいなくなる夢を見た……気がする……」


言葉にすると急に夢じゃないような気がしてきて、猫の生首を持ち上げて胸に抱きしめる。

もそもそと胸元で動いた猫が言う。



「……僕らのアリス、よくお聞き。
……それは夢じゃないよ。…僕らはもう消えたんだ。」


「え…?」


「君はもう歪んではいない。もう僕らが居る必要はなくなったんだ。
……僕も、もういない。」


猫の突然の告白にわたしは唖然とする。


「…いないって…、あなたここに、いるじゃない…!」


「…こっちが夢。
いない方が、現実だよ。」


…なに言ってるの?

ちぇしゃ ねこ は
      なに を ?

だってちゃんと触れてるし、体温だって感じるのに
これは夢だって言うの?


「アリス、僕らのアリス。
忘れないで。
消えてしまっても、僕らはみんなアリスのことを想っているよ」


「いやよ!やめて…!」


やめて

そんなこと言わないで


信じたくないよそんなこと



やめて
      やめて

 
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