存在=生と死

□召喚!
1ページ/4ページ

地鳴りと閃光が激しさを増していた。
呪文を唱え終えたレイチェルは腰が抜けたのかその場にしゃがみこんでいる。
「ロエル!レイチェルを!」
ロエルは素早くレイチェルのそばにかけより、俺から少し離れた場所に移動する。閃光は火炎へと変わり、地鳴りと共に地面からついにその姿を現した。
「間違いない、イフリートだ!」
ロエルがレイチェルに言った。当のレイチェルは呆然と火炎をまとった人型の巨人、魔獣イフリートを見つめていた。
「ガアア!」
炎を吐き出し辺りの木々を燃やし始めた。
やっぱり暴走している。
「初召喚魔獣だけど、暴れられちゃ困るんだよ!」
俺はイフリートに向かって走り出した。それに気づいたイフリートは火炎を俺に向け放ってきたが、それをかわしつつイフリートに接近し、まずは 大剣で腕を切りつけた。
「チッ、浅いか!」
「グガアァァ!」
今度はさらに激しい火炎を吐き出してきた。間一髪でかわすが背後の木がバキバキと音をたてて倒れた。一瞬で燃え尽くす火炎力。当たればひとたまりもない。
「リーちゃん!俺も…!」
「任せとけって!手加減なしでかたつけてやる」
そう言って素早く呪文を唱えた。
「ブリザード!」
放たれた魔法はイフリートに直撃する。動きが鈍くなった瞬間を逃さず、背後に回り大剣で一突きした。
「グガアッ」
すると急速に火炎は消え、イフリートも消滅した……。





「おい、大丈夫か?」
呆然としているレイチェルに俺は何度も話しかけていたた。ようやくはっと我に返ったレイチェルはなぜか突然ぽろぽろと涙を流し始めた。
「えっ…な…どうしたんだ?」
焦った。召喚出来たことを喜ぶわけでもなく、泣き出すんだから…。ロエルに助けを求めようとしたが、さっきの戦闘で燃え広がった炎の消火活動をしていて姿が見えない。無理そうだ。
「…私……」
レイチェルがぽつりと話始めた。
「あんな……恐ろしい魔獣…召喚して……リヴァさんを………っ」
「イフリートの召喚は俺が言った事で…」
「死んじゃうのかも……って…!」
そう言ってレイチェルは俺にしがみつくように抱きついてきた。
「お…おい…?」
振り払うのは簡単だったが、背中に回された腕や自分の胸に顔をうずめたレイチェルの全身がガタガタと震えているのがわかって、俺もそっと彼女を抱き締め返した。
「すまない…怖い思いさせたな………」
レイチェルの腕に力が入る。
「う……うぅ…っ」
涙が止まらない様子のレイチェルの背中をぽんぽんと子供をあやすように叩いた。





消火活動をしていたロエルがようやく戻ってきた。その頃にはレイチェルも少し落ち着きを取り戻していた。
「お疲れ」
「うん…ホントに疲れたよ〜。魔力使い果たした感じ。ていうかさすが火炎の魔獣だね」
感心したようにうんうんと頷くロエル。
「それより発動した時の状況を説明してくれよ。針が振り切れていただろ?」
「えっ振り切れて…!?」
レイチェルが驚く。
「うん。測定器の針が振り切れていて、測定不能になっていたんだ。これは魔力が強すぎた場合に起こるんだけど……」
ロエルが一息おいて言葉を続けた。
「レイチェルに魔力がないんじゃなくて、魔力が強すぎて低級なやつを引き出せないんじゃないかな…。例えば圧倒的な力を持つやつの前にかなわないやつが堂々と出てくるわけがないだろう?まぁ自暴自棄になれば別だけどね」
「じゃあ、使い魔の召喚の失敗はレイチェルの魔力に恐れをなしたってことかよ」
「そんなこと…」
レイチェルが信じられないといった風に頭を抱える。
「あくまで仮定の話だから。でも召喚は成功したんだから良かったじゃない」
ロエルがレイチェルに言ったが、彼女の表情は曇ったままだった。まるで召喚したことを後悔でもしてしてるかのように…。
この日は何かわだかまりを残したまま帰宅することにした。





「ミラー、ホントにいいの?レイチェルの事」
「そうよ。あの女最近目障りだわ」
ミラーを囲み数人の女子生徒達が言っていた。
「……ただですませるわけないじゃない」
ミラーが不敵な笑みを見せる。女子生徒達は顔を見合わせクスクスと笑いだした。





翌朝。
いつものように気だるそうに俺は学校へ向かうために店を出た。
「この憂鬱感…しんどいったらないな。学校辞めるわけにはいかねぇのかなぁ……」
ため息をつきながら、重い足取りで歩いているとその先に人の気配を感じた。
「おはようございます」
レイチェルだ。ペコリと頭を下げ挨拶をする。
「あ、あぁおはよう…」
「ロエルさんにおうち聞いてきてしまいました」
「ロエルに?わざわざ…」
俺がいいかけると一変してレイチェルの表情が曇った。
「迷惑でしたか…?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ