イナズマ×ポケモン

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いつの間にか、鬼道くんの手には技マシンのディスクを取り出した。
以前、士郎に見せてもらったものとは微妙に色が違う…タイプで分かれているのかな…?

「マッスグマはノーマルタイプだ。ポケモンと同タイプの技は、通常より威力が上がる。見たところ、名前のマッスグマはよく懐いているようだしな」

「うん!マッスグマとはね、小さい頃からのずっと一緒なんだよ!」


「よし、それじゃあ覚えさせるぞ」




"恩返し"、その名の通りポケモンが主に恩を返すように想いを込めて体当たりする技。
ポケモンとの信頼が一目で分かる技だと思う。

そしてマッスグマはその技でサンダースに突撃した。
サンダースは今日一番飛ばされて、バタリと地面に倒れた。
起き上がる様子は、ない。

フィールドの端に立っていた審判が、じっとサンダースの様子を確認する。
そして旗を大きく掲げた。

「サンダース、戦闘不能!マッスグマの勝ち!よってこの勝負、名字名前の勝ち!!」

その言葉に、観覧席からワアァアと歓声が上がった。

「……はぁ…か…勝った………の?」

回路が故障したみたいに、頭の回転が追いつかない。
審判の人の声はちゃんと聞こえたのに、中々実感が沸かない。

「私…勝ったんだ……!」

次第に込み上げてくる嬉しさに、私は咄嗟にマッスグマに駆け寄った。
ここまで頑張ってくれたマッスグマをぎゅっと抱きしめて、頬に温かい滴が流れたのをマッスグマが舐めた。




決勝戦が終わり、表彰式と共に閉会式も終わった。
私はいろんな人に祝福の言葉を掛けられながらも、気が付けばある人物の姿が消えていることに気付き、慌ててその人物を探した。
やっと見つけた頃には、その人物はもう旅立つ準備をしていた。

「う…宇都宮、くん!!」

もう既に前を見据えている宇都宮くんの背中に精一杯の声を投げた。
でも探し回って走ったことに加え、大声を出したから膝に手をついて肩で息をする…体力ないな、私。
息を整えている間に、宇都宮くんはゆっくりと振り返った。

「………名前さん」

決勝戦前の、あの闘志を燃やしていた目とは違う。
今は少し……悲しそうだ。

「良か…った……ハァ…ハァッ…宇都宮くんを、探したんだよ…?」

「…今更俺に何の用ですか?向こうで豪炎寺さん達が待ってますよ」

「ううん…今は用があるのは…宇都宮くんだから…」

深呼吸をして、ようやく息が整った。
宇都宮くんの口調は、バトル前とは違い淡々としていた。

「さっきのバトル、本当にすごかったよ!サンダースは素早いから一瞬も気を抜けないし、攻撃だって威力すごかった!」

「………」

「私よりずっとすごいよ!きっと今回勝てたのは、まぐれで…」

「だから、何ですか?」

宇都宮くんは、ピシャリと言い放った。

「俺、豪炎寺さんに憧れてました。いつかはポケモントレーナーになって豪炎寺さんに挑戦するのが夢でした。だけど…俺が四天王に勝って、ようやくその夢が叶うと思ったらあの人はいなかった。そして今こうして見つけたのに…まさか、貴方みたいな人と旅をしてるなんて思わなかった。だって初戦のバトルだって勝ったけど、俺には名前さんはまだまだ新米トレーナーのように見えた」

「…そうだね。私、ポケモンバトルを始めたのは修也達が戻ってきてからだから」

「俺はそんな名前さんに負けたくなかった!!まだバトルを始めたばかりみたいな人に、俺の夢を邪魔されたみたいで…カントーリーグで豪炎寺さんと戦いたいのに!何で、名前さんなんかに…!!」

悔しそうに宇都宮くんは俯きながらぎゅっと手を握りしめる。
そんな様子に、私は何も言葉が出てこなかった。
宇都宮くんの夢の邪魔をした…その事実は変わらないのだから。

「それは違う」

「…豪炎寺さん…!」

低い声が聞こえたかと思うと、いつの間にか修也が私達の元へ来ていた。
修也の後ろには士郎や鬼道くんもいる。

「確かに俺はリーグに戻るべきだろう。今まで俺の元へ辿り着く挑戦者が少なく退屈だったせいもある…だが、たまには俺だって外へ旅したい気持ちもある。特にこいつを…名前を今まで放ってしまっていたからな」

「それにね、虎丸くん。僕らはチャンピオンの仕事をサボって好き勝手に旅してるって思われてるけど…それは誤解で、実は響木博士にある仕事を頼まれているんだ」

「えっ…!?」

「その仕事は危険な区域を通らなくちゃならなくて、普通のトレーナーには無理なんだ。そこで僕達が選ばれたってわけ。これでも、チャンピオンだからね!」

「名前は俺達についてきているだけだ。名前が旅をしたいと言い出したが、こいつには旅の経験がない…だから俺達が仕事のついでに、旅の付き添いをしているわけだ」

そういえば…すっかりバトル大会のことで忘れていたけど修也と士郎は響木博士に頼まれごとをされていたんだ。

「あ、あの!!良かったら俺も、その仕事に同行させてください!!」

「…え?」

「俺、今日のバトルや豪炎寺さんとのバトルで、自分はまだまだだなって実感しました。もっと勉強したいんです、お願いします!決して皆さんの足手まといにはなりません!!」

「でも、響木博士の仕事っていうのは危険な区域に行くことになるんだよ?」

「自分の身は自分で守ります、だから…お願いします!!」

宇都宮くんはペコリと深く頭を下げた。
私には判断できないので、後ろの三人へ振り返る。

「どうする?私は宇都宮くんさえよければいいと思うんだけど…」

「まあ、いいんじゃないか?中々強そうだしな」

これは鬼道くん。

「本人がそう言うなら、僕も否定はしないよ」

これは士郎。

「仕方ないな。ただし、俺達は甘やかしたりしないぞ」

これは修也。

ということは…三人の了承はとれた!

「じゃあこれで、宇都宮くんも仲間だね!」

深く下がった頭が上がり、パアッと効果音でもつきそうなぐらい、嬉しそうな宇都宮くんの顔がそこにはあった。
修也と一緒に旅ができて、嬉しいんだろうなあ。

「よ、よろしくお願いします!!」

「こちらこそよろしくね、宇都宮くん!」

「これからは虎丸って呼んでください、名前さん。それから先程はすみませんでした」

「ううん。気にしてないから大丈夫だよ、虎丸くん」

笑ってそう返すと、虎丸くんも無邪気な笑顔で返してくれた。
何だか弟が出来たみたいで、私もすごく嬉しい。

「あ…」

虎丸くんは何かを思い出したかのように一言漏らすと、すたすたと修也達の前へ歩み出た。

「俺、みなさんのバトルを見てしっかり勉強します!盗める技術は盗むつもりなので、覚悟しておいてくださいね!油断してると、いつか追い抜いちゃいますから!」

「………何か性格変わってないか?」

ニッと虎丸くんは歯を見せて、挑戦的に笑った。
鬼道くんが呟いた言葉には、みんな苦笑いしている。
旅をしたいと願い出た姿とは違い、今の虎丸くんはすごく強気だ。

いつか私も、みんなに追いつきたいな…。



ともかく、バトル大会も無事に終わり、秘伝マシン08 ロッククライムを手に入れました。
そして新たな仲間、宇都宮くんも加わって五人となり、次の町へと向かいます。

 

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