イナズマ×ポケモン
□06
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それからトキワシティに到着するまで、ポケモンと出会うことはなかった。
まるで、私と共に歩いている幼馴染の力に、一歩引いているような気がした。
トキワシティに到着してすぐ、先程のバトルで負傷したマッスグマを看てもらう為、ポケモンセンターへ直行した。
傷は大したことはなかったが、回復できる内にしておいた方がいいという修也の意見だった。
マッスグマを預けた後、近くのトレーナー専用ホテルへ向かった。
ロビーには、ポケモンを連れたトレーナーの姿が少しばかり。
二人の話によると、都会に行けばもっとトレーナーがいるらしい。
フロントの人には二人がすぐにチャンピオンだということがバレ、私は改めて二人の凄さを実感する。
ちょっとした騒ぎを何とか抜け、現在借りた部屋の一室。
これからの行動予定の確認だ。
「まずは…」
「名前ちゃん!」
「っ、はい!」
予定の確認かと思ったら、急に士郎に大きな声で名前を呼ばれた。
「さっきのバトル…どうしたの?」
「あ………」
それはここまで来るときに、二人が疑問に思っているだろうとひしひしと感じていた。
まさか自分のポケモンの技までよく理解していないのだから、不思議に思うのは当然だろう。
「えと…バトル、苦手になっちゃって…」
何となく言いづらくなってしまい、私は弱々しく答えた。
苦手になったのは、本当のことだ。
「でも、自分のポケモンの技くらいは把握してるものじゃないかな?」
「そ、それは…」
「マッスグマってジグザグマの進化系なんだよね?野生のマッスグマを捕まえたのなら別だけど、進化したのならバトルぐらいはしてたはずだよね?」
「………」
確かに私のマッスグマは、元々はジグザグマだった。
たまたま散歩していたときに私に懐いてきたんだのが、進化前のジグザグマだった。
ジグザグマは勝手に散歩に出かけるようなことがあって、ある日帰ってきたと思ったらマッスグマに進化していたのだ。
だから正直な話、私はマッスグマと共に野生のポケモンとバトルをしたことはない。
一緒に過ごせればそれで良かったから、どんな技を覚えているかは分からないんだ。
今まで黙って見ていた修也が、口を開いた。
「名前、俺達に何か隠してるんじゃないか?」
辺りが、沈黙に包まれる。
隠してること…なんて………。
「…大丈夫、だよ!何でもないから…ね?」
二人に心配をかけるわけにはいかない。
ただでさえ、小さい頃に迷惑ばかりかけてしまったのに。
これは、私の問題だよ…二人に頼ってはいけないんだ。
「…分かった、何もないんだな?」
「うん。私は大丈夫だよ…ちょっと近く回ってくるね!」
気を紛らわすように、私は部屋を出た。
私が出た後に、二人が何を話していたのかは知らない。
「ねえ、どう思う?名前ちゃんの様子」
「隠し事がない、というのは嘘だな」
「だよね!名前ちゃん、嘘をつくときは左手の甲を右手で隠す癖があるし」
「俺達が旅をしている間に、何かあったんだろうな」
「それが名前ちゃんの強くなりたい理由と関係してるのかな…」
「…ともかく、俺達に出来ることは協力してやるか」
「そうだね!」