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□戦線から離脱
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予選リーグで引き分けに終わってしまったイナズマジャパンと、決勝で会おうとフィディオは約束した。
決勝リーグ初戦は無名のリトルギガントというチーム。

フィディオの実力を信じてキャプテンは彼にチームを任せて試合には出場しなかった。
ようやく信頼できるようになった監督も失ってしまったが、オルフェウスの勢いは止まらない。

油断はするな、俺達のサッカーをしよう。
試合が始まる前に、フィディオはそう言った。



けれど試合は一方的に私達の負けだった。
私達の攻撃が、守備が、何も通じなかった。
試合終了間際に、フィディオが渾身のオーディンソードを放ったがリトルギガントのキーパーは、至って平然と制してみせた。
終わりを告げるホイッスルがいっぱいに鳴り響いた。
スコアボードには前半3失点、後半5失点という残酷な結果が尚も表示されている。



控え室の空気は鉛のように重く冷たかった。
いつもなら勝ってわいわい騒いでいる者や疲れを労る者ばかりの空間。
だが今日だけは、全く違った。
よりによって、優勝候補のオルフェウスが無名のチームに惨敗するなんて…。

「まさか…リトルギガントがあんな強豪だったなんて…」

フィディオは仮にもキャプテンとしてチームを任された。
だからその分、負けた悔しさが他の選手より大きいのだろう。
彼の性格のことだ…あそこでこう采配していれば、ああ動いていれば、などの後悔の念に囚われているに違いない。

「……みんな………」

でも理由はそれだけではない。
私は分かってしまった。
今回の試合で、何故負けたのか。


リトルギガントのベンチには女の子がいた。
髪の長い、大人っぽい女の子。
最初はマネージャーかと思ったが、ハーフタイムのとき彼女の動きは違った。
勿論私のようなマネージャーの仕事もしていたが、何より彼女は選手達に何やら説明をしていた。
そして気が付いた………彼女はこちらの戦力を完璧に分析している、と。

後半になってそれは確信に変わる。
前半は3点取られたが巻き返してやる、と決心していたみんなの攻撃が、更に封じ込められた。
唯一フィディオだけは何とか持ち前の運動神経で突破していたが、それでも得点には繋がらなかった。
やがて反撃もならないまま、試合は終わった。


そうだ、私のせいだ。
フィディオが、絶対優勝するから、って言ったから…私はそれに安心しきっていた。
彼なら絶対やってくれるんだ、と。

でも違う、世界にはフィディオより強い人だっているんだ。
だから、私が支えなくちゃいけないのに。
私が、サポートしなきゃ…その為のマネージャーなのに。
私は…相手を分析できなかった。

「ぅ…ふぅっ…ご、ごめ…ん、ね…フィディ、オ…!」

控え室から逃げて、廊下のベンチに一人腰掛け、私は涙した。
みんなはボロボロになりながらも戦ったのに、私は戦ってすらいなかったんだね。




戦線から離脱

(私はマネージャー失格だね…)
 

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