二羽の鳥が羽ばたいて

□7.空羽の願い
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どうやら眠っていたらしい、舞衣は欠伸を1つした。

医療班に運ばれ検査をしても、舞衣が倒れた原因はわからなかったと、ネジは聞かされただろう。
本当のことは誰にも告げられない…舞衣は医務室のベッドに寝そべりながら、伸びを一つした。

…もう、試合が始まっているだろう、行かなきゃならない。
早く強くなるために…舞衣は起き上がった。

刹那、グッと力強く自分を押さえつける何かの感触。
そして、優しくも厳しさを滲ませた声が、狭い部屋に響いた。

「ダメです、舞衣様」
「空羽…離して?」
「嫌です、離しません。舞衣様は狙われているんですよ?」

…検査中、暇だから話し相手にと呼び出したことが、まさか裏目に出るとは思わなかった。
しかし、彼女が心配するのも無理はない。
あたりを見渡すと、確かに彼の気配を感じるのだ。
しかし、舞衣は首を振り笑った。

「あたしは、父と母の名に恥じない忍になりたいの」

空羽の手を振り払い、舞衣は立ち上がり、会場へと足を進めていく。

「私は舞衣様が傷つく姿をこれ以上見たくない!!」

そんな空羽の悲痛な願いを聞き入れずに、舞衣は口寄せを解除した。

****

舞衣が来ると、既にカンクロウとミスミという忍が戦っていた。

「舞衣!大丈夫だった?異常無しなんて…」
「大丈夫だよーテンテン。ちょっと額宛てをきつく巻きすぎてたみたい」
「もー馬鹿なんだから!」
笑いながらふざけあう2人を、ネジは試合を見ながら横目で見つめていた。

(額宛てがきつすぎた?そんなわけがない…ならばなぜあのとき額宛てを外すことを拒んだ?これは嘘だ…)

「ネジ」
はっと、ネジは顔を上げる。
そこには、片目を閉じ、人差し指を口元にあてて笑う舞衣がいた。

「勝者・カンクロウ!!」

そう高らかな声を響かせる試験官の声、電光掲示板にうつるそこには自分の名前、そして『美瑛 舞衣』という文字。
ネジはそこで、思考を別のものに切り替えた。

「申しわけありませんが、ランダムで2回闘ってもらう人を選ばせていただきました。
…なのでネジくんには少し厳しいですが…1度負けても、もう一度チャンスがあると思ってください」
そんなチャンスは余計だなと、苦笑しつつ、舞衣はネジとほぼ同時に柵を飛び降りた。

「・・・お前の大体の能力はわかっているが」
「あたしも大体の能力は見切ってるよ。手加減はしないから…ね?」

普段通りに彼女は笑っているが、眼だけは笑っていない。
今まで何度見ただろう、あの般若の姿を。
あれの一歩手前の表情を、今の彼女はしている。
ネジは、目の前のチームメイトに恐怖心を抱いた。
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