二羽の鳥が羽ばたいて

□5.違和感の確信
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ネジやテンテン、リーは解けるかなと思いながら、舞衣は1問目を解き終え、2問目を見た。

(・・・無理。
不確定条件と力学的エネルギーの解析を応用した融合問題なんて無理。
応用でさらに融合問題なんて無理。3問目の相対性理論の説明も…無理。
あ、5問目はモル計算の応用か…ならいけるかも)

しかし、これでは点を確実には取れない。
舞衣は先ほどのイビキの言葉を思い出す。
そこにヒントはあるはずなのだ。

『無様なカンニングを行った者は自滅していくと心得てもらおう。
仮にも中忍を目指す忍なら……立派な忍らしくすることだ』
無様なカンニングをする者は失格、立派な忍らしく…ということは…!

舞衣は顔をあげた。
ネジやテンテン、リーはもう動き出していた。
ネジは白眼を発動し、テンテンはリーと協力しながら解いている。
…やはりそうだ。

これは知力をみるのではない。
カンニング公認の偽装、隠ぺい術を駆使した情報収集能力を見る試験…。
舞衣はそう答えを出し、印を結んだ。

(一番確実なのはネジかな…伝心法!)

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ネジは白眼で全て解き終え、暇を持て余していた。
突然、頭に舞衣の声が響いたのはそのときだ。
ネジは意識をそちらに集中させる。
これが舞衣の…伝心法だと気づいていたからだ。
天真爛漫な舞衣の声が、脳に響く。

『ネージ!今からネジの身体借りるねぇ』

意外な発言に、驚いてる間もなくネジの意識は途絶える。
そして気づけば、舞衣の座っている席に、自分はいた。
以前、舞衣から聞いたことがある。
これは、精神を入れ替える伝心法・心身転身の術だ。

そして今、自分の前に自分がいる。
…あまり良いものではないなと思いつつ、舞衣の用紙を見た。
(なっ…こいつ1問目と5問目は自力で解けている…やはり、凄いな)

その間にも、脱落者はたくさん出ていた。

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それからしばらくして舞衣は術を解き、心身転身中に記憶した答えを書いていった。

「では説明しよう。これは…絶望的なルールだ」

舞衣は答えを書き終えたのは、この言葉とほぼ同時。
話は既に、10問目の話に入っていたのだ。

「まずこの10問目を受けるか受けないか、選んでもらう」
「え…選ぶって…!もし10問目の問題を受けなかったどうなるの!?」
「受けないを選べばその時点でその者の持ち点は0になる…つまり失格!
同班の者も道連れ不合格だ…そしてもう一つのルール。
受けるを選び正解出来なかった場合──その者については、今後永久に中忍試験の受験資格を剥奪する!!」

「そ…そんなバカなルールがあるかぁ!!
現にここには中忍試験を何度か受験している奴だっているはずだ!!」

必死な言葉もイビキは嘲笑し、冷たく返す。
「運が悪いんだよお前らは…今年はこのオレがルールだ。
引き返す道も与えてるじゃねーか…自信の無い奴は受けないを選んで、来年も再来年も受験したらいい」

どちらに転んでも分が悪い、これでは拷問だ。
舞衣はキッとイビキを睨みつける。
だが、舞衣当人の気持ちは、もう決まっていた。


「では始めよう。この10問目……受けない者は手をあげろ」

しばらくして、イビキがそう呼びかける。
それから再び、沈黙が訪れる。
…しかし、それも長くは続かなかった。
誰も何も言葉を出さないその世界の中、ついに手を上げるものが一人。

「オ…オレは……やめる!受けない!」

それが引き金を引いたかのように、手を挙げる者が増えていった。
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