二羽の鳥が羽ばたいて

□3.煌めきの中で
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「舞衣?顔色悪いわよ?」
「ん?ああ、大丈夫だよ。船酔い船酔い」

テンテンの言葉に、舞衣は苦笑の混じった笑いを返した。
…それにしても、身体のあちこちが痛くてたまらない。
何か冷やすものが欲しいと思ったとき、ちょうど遠くから「着いた」という声が聞こえた。
2日くらいかかったが、無事にたどり着いたらしい。

全員、海岸に降り立つ。
…舞衣の顔は船酔いなんて次元を超えるほど、青かった。
それは森に覆われ、ドーム状になっている島の外観を見てしまったせいだ。
今更、帰るなんて言うこともできない…。
その事実に、彼女はさらに顔色を悪くする。
それは、心配そうな目でネジが舞衣を見ていたことにも、気づけないほどの重症だった。


ツリーハウスに暮らしているらしいが、島民はあまり外に出ないらしい。
そんな国に少し足を踏み入れた瞬間、光がうっすらとしか差さなくなった。
薄暗い空間、ぼんやりとお互いの顔が見える空間。
異質な世界に眩暈がした。

「今から3組に別れる。オレは1人だがお前らは2人ずつに別れろ!」
そうしてじゃんけんをした結果、舞衣とネジ、テンテンとリーに分かれる。

「舞衣、取り敢えずオレたちはテンテンたちとは反対方向に行くぞ」
テンテンたちが歩き出すのを見てから、ネジが指した方向は、今立っている場所よりさらに暗い場所だった。

(それにしても…)
ちらりと、舞衣はあたりを見渡す。
青空なのに、森やツリーハウスなどの障害物のせいで暗い。
これのどこが【星の国】なのだろうか。
代われるものなら空羽に代わってもらいたい。


落ち着いて、落ち着いて…何事もないような感じを振る舞わなければ恐怖感が増してしまう…!
そう自分に言い聞かせてから、舞衣は引きつった笑みを作る。
そして棒読みで、頭にある台本のセリフを読み上げた。

「行こうかーネジー」
「…お前、様子が何時もと違うぞ?」
「そんなことないよーレッツゴー」

震えながら歩きだす舞衣。
不審げに、そして心配そうに舞衣を見つめながら、後に続くネジ。
二人は、次第にその闇に飲まれていった。

****

森の奥はかなり暗く、光を探しても見つからなかった。
深海のような島に、光があるのは海岸だけだ。

「気を付けろよ。この下は崖だ」

ふらついている舞衣の足取りが、危険な方向に行っているため、ネジはしばしば周りに気を使っては注意を促す。
舞衣もそれを素直に聞いていた。

しかし、舞衣の足取りは震えていて今にも倒れそうな状態だった。
此処までくれば、隣にいる人間なら、誰でも気づくことが出来るだろう。

そう、舞衣は…極度の暗所恐怖症。
少しでも光がないと数分で失神してしまうのだ。

実際、彼女はもうフワッと意識が飛ぶ寸前までに、限界を迎えていた。
それでもなんとか意識を保とうとしていたのだ。
しかし…やはり限界には変わりは無かったのだろう。
意識を落としかけたそのとき、ついに彼女は、足を踏み外した。

「あっ────!!」
「!…舞衣!」

─――ひとりにしてはいけない…!

なぜかそう思ったネジは、とっさに舞衣を庇うように抱きしめる。
そしてそのまま…二人は地の底へ落ちていった。
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