二羽の鳥が羽ばたいて

□2.二つの表情
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あれからずっと、演習場のど真ん中にガイは立っていた。
暇だ。
早く誰か来ないものか、そう思いつつ、彼は待つ。
気配を感じたのは、そう願ってからすぐだった。
彼は振り向き、笑う。

「お前1人で来たか…いくらお前でも一人では無理だぞ、ネジ」
「フッ・・・それはどうだかな」

柔拳の構えを取り、白眼を発動しながら、ネジもまた不敵な笑みを浮かべ、ガイを見るフリをして舞衣たちを見た。

(定位置に着いたようだな…はじめるか)

ネジはチャクラを手に集中させ、ガイの懐に向かって走り出した。

****

どれくらいが経っただろうか。
舞衣は、そのときが来るまで致命傷を当てる必要はないといっていた。
しかし、やはり一度くらいは懐に柔拳を叩き込んでおきたい。
それなのに、この男、隙が全く見当たらない。
上忍と言うのは本当だったようだ。
正直、あまりにもふざけた格好をしていたため、疑っていたのだ。

(何処の世界に全身緑のスーツの上忍がいると言うんだ!)

全身緑スーツの激太眉毛付きのその男が上忍であると、ネジはあまり信じたくはなかった。
…それより、そろそろ来るのではないだろうか?
ネジはガイに悟られないように、攻撃の手は休めずに、その時を待った。


…刹那、音を立てずに、突然、草むらから人が飛び出した。
(来たか)
ネジが待ち望んでいたその人物…リーは、ガイに向かって背後から蹴りを入れにかかる。
しかし、ガイは当然ガードし、そのままリーを吹き飛ばした。

・・・かかった。
ネジはそう思うよりも早く、彼に生まれたそのポイントの点穴を…突いた。
「!」
ガイが、顔を苦痛に歪める。
下忍相手だからと油断していたのか、それとも彼なりの優しさか…モロに点穴を突かれているのだし、前者だろう。

とにかく、これで変わり身を使うことが不可能になった。
そして、次にテンテンが煙玉を投げる。
白くなった風景、狭くなる視界。
・・・どうやら、彼女の思惑通りとなったようだ。


耳を澄ませると、足音と共に不敵そうな声が聞こえてくる。

「完璧よ…まさかここまで上手くいくとは思わなかった…!
あたしたちの勝ちね!現象法・木縛!!」
「なっ…!」

突然、地面から生えてきた木が、ガイを縛りあげる。
そして、身動きが出来ぬように、封じ込む。
ガイは、慌てて木から抜け出そうともがきだす。
しかし、舞衣は逃がすつもりなど毛頭ないのだろう。

彼女が、ゆっくりと手を前に伸ばす。
それと同時に…生えてきた木が、石化した。
…しかし、まだ諦めきれないらしい。
それを見かねた舞衣が、「ふんぬーっ」と、叫びながら抜け出そうとする往生際の悪い教師に、笑った。

「動いたらガイ先生の身体も木と一緒に石にします。大人しくしてください」

…これから世話になる上忍を、殺す気満々の声だった。
しかし当の本人は楽しそうに、すっかり動かなくなったガイの服から、鈴を3つ奪い取っている。
そしてそれを、テンテン、リー、自分に手渡してきた。

「4人とも鈴を一度手に入れたから、これで先生の負けだね」

そう彼女が嬉しげに微笑んだ瞬間、ガイは木から解放された。
それと同時に彼は点穴を突いたりしたせいか、地面にそのまま倒れ伏した。
慌ててリーとテンテンが駆け寄ると、ガイはぐったりとしながらも、2人に支えられてなんとか立ち上がる。
…正直、大袈裟過ぎないだろうか?
それほど彼女の術が絶大だったのだろうか、それとも精神的な問題か。

当の本人はというと、ふらふらした酔っ払いのような千鳥足で、舞衣の後ろにある木陰に座り込んだ。
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