二羽の鳥が羽ばたいて

□10.二羽の鳥が羽ばたいて
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あなたとならもう何も怖くない。

一緒に、羽ばたこう。

どこまでも、

どこまでも。

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あれから、気づけば2年が経っていた。
テンテンとリーは中忍に、オレは上忍に昇格した。
舞衣は…まだ病院のベッドで、心は15歳のままずっと眠り続けている。

…あのとき、自分は死ぬはずだった。
レンの刃を受けたと同時に、柔拳を打って…そのまま、死ぬつもりだった。
そうすれば、彼女はレンと言う運命からは解放されるはずだった。

しかし、彼女は新たに結んだ約束を果たした。
「二人で運命を変えよう」
その言葉どおり、彼女は動いた。
突き刺さった刃、傾く身体、最後の笑顔、首筋に光る羽根、最後の言葉…。
全てが、変わらずオレの記憶に焼きついている。

あの後、遅れて駆けつけたのは空羽だった。
舞衣に「本当に、馬鹿なご主人様」と笑って。
それから、レンを見て泣き崩れた。
…ああ、道理でレンに逆らえなかったわけだと、心の片隅でなんとなく感じていたのを覚えている。
本当は、「もう止めましょう」の一言でも言いたかっただろうに。
真実を知ってしまった頃には、もう、何も言うことは出来なかった。


綱手様から「舞衣次第だ」と言われたのは、それからさらに一週間後のことだった。
首の呪印が綺麗さっぱり無くなった、ベッドに横たわる彼女。
それを見つめながら、彼女はオレに《選択肢》を出してくれた。

このまま目覚めるかわからない彼女を待つか、捨てるか。
捨てるなら、もし目覚めたときには、彼女の記憶を消去してやろう、と。
…あれはとんだ愚問だった。

いくらでも待てる自信はあった。
彼女は、オレに最大級の愛の言葉を言ってくれた。
しかし、オレはまだ、何も一言も返せていない。

それに、この物語は、この運命は、舞衣が目覚めたとき、はじめて完結する。

諦めの悪い舞衣だ。
ここで引き下がる女ではないと言うことを、オレはよく知っていた。


そんなこんなで、気づいたら二年も経ってしまっていた。
手を握ったり頭を撫でてやったり…色々したが、舞衣は穏やかな表情のまま眼を開けない。
相当長い夢を見ているらしい。
だから、オレはある日見つけてしまった彼女の日記を読むと決めた。
それが嫌なら早く起きろ、だ。

…ネジはあの日記を2ページのみ除いて、全て読みきった。
最後のページは当然空白。
残されたページは…あの二人が枕を交わした日のもの。

…少しだけ、怖かったのだ。
あのページに、彼女の思いの全てが書いてあること。
それが少し、恐ろしかった。
読むべき日まで、待とうとも思った。
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